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ショパン最後のサロンコンサートを再現 平野啓一郎の小説「葬送」基に

カルチャー | 神奈川新聞 | 2016年5月27日(金) 12:30

 ショパンは1849年、39歳のときにパリで死去した。最後のサロンコンサートはその前年の2月16日、ピアノ製作会社「プレイエル商会」が経営するホールで開かれた。

 パリの社交界を舞台に、ショパンは約20年間活動したが、そのうちリサイタルを開いたのはわずか6回ほど。また、最後の公演はプログラムにも曲目は記されず、ファンの間では伝説的な存在となっている。

 平野は「葬送」で100ページほどを費やして、このリサイタルの様子を描写。演奏された18曲はもちろん、ピアノのタッチや強弱まで微細に記した。また、それに驚き、感動する聴衆たちの反応も生々しい。この小説の中でも「死を前に、彼の天才性が十分に発揮される」(平野)きわめて重要な場面だ。

 「最後のコンサートの演奏曲は、いろいろな人が想像していて、かぶっている曲もあるし、僕と解釈が違う人もいる。でもだいたいこのへんの曲じゃないかなと、いうところです」と平野は話す。

 当時のリサイタルの内容を予想するにあたり、①ショパンは小曲は4、5曲まとめて弾くという説がある②英国で何度か行ったコンサートでは曲目がほとんど同じである―ことを考慮した。当時のパリで評判のよかった曲も調査。さらに、聴衆の中にショパンが曲を献呈した人がいたかどうかなど、人間関係からも特定したという。

 執筆にあたり平野は、ショパンの弟子や親しかった人たちの証言記録や、他のコンサートの資料といった多くの文献をパリなどで入手し、ひもといた。聴衆の反応の描写は、記録を基にした史実でもある。

 「『葬送』を読んだ後、たくさんの人が、実際に自分であの通りに聴いてみた、と言ってくれた。いろいろな曲が入っているから大変だろうなと思って」と平野は笑顔を浮かべる。こうした声を受け、ことし4月には、小説で描かれたプログラムを並べたCDを制作した。そして今回、生演奏が実現することに。

 「『葬送』は、好きだと言ってくれる人たちが多かった作品です。ショパンの生誕200年を機会に、あらためて読んでいただいた上、このようなリサイタルが実現できるのはたいへんうれしい」

※記事は神奈川新聞で2010年7月22日に掲載されたものです。

 
 

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