
ピアノに合わせ、1万1千人が両手を打つ。生まれた音の輪が、会場を満たしていく。あふれ出す高揚。空気がきらきらと輝いていく。
「(日本)武道館には、何かが宿っている。お客さんの顔を見ていると幸せ」
広がる光景に目を細めたのは、シンガー・ソングライターの星野源(35)。土砂降りに見舞われたホワイトデー。「寒かったでしょう。すみません」と頭を下げて始まった日本武道館公演は、昨年末のNHK紅白歌合戦で披露した「SUN」、相模鉄道いずみ野線の湘南台駅でミュージックビデオを撮影した「時よ」などを女性ダンサーとともに踊りながら歌い、観客とひとつになった。
中盤には、アコースティックギター1本で弾き語りも展開。故・植木等が歌った「スーダラ節」をカバーした場面では、「ライブでやったら、一番前のお客さんが泣いて。まさかスーダラ節で泣くなんてと思ったけれど、その涙を見て(自分が)歌い続けていいのかなと思った」。悩み迷った時期を吹っ切れた逸話を明かした。
2012年12月、くも膜下出血の診断を受け、活動を休止。手術・休養を経て14年2月、この日立った武道館で復帰ライブを開いた。再起ののろしを上げた同地は、星野にとって特別な場所だ。
「武道館をダンスホールにしよう」と始まった「SUN」では、マイクを手にステージ左右に延びた花道に飛び出し、声援を送る客のそばで熱唱。太陽の光を思わせる、ゴールドのテープが吹き出す演出もあり、会場を沸かせた。
「みなさん今日はありがとう。大成功でした。身体に記憶が刻み込まれました。また近いうちにライブをやりたいと思います。そのときは、またここでお会いしましょう」と再会を誓った。







