文書(もんじょ)と書物群の国宝としては、東大寺聖教(しょうぎょう)や島津家文書などに続いて6件目となる「称名寺聖教、金沢文庫文書」。県立金沢文庫(横浜市金沢区)の西岡芳文学芸課長は「なぜ鎌倉幕府はほろんだのか、蒙古襲来の際、幕府はどう行動したのかなど、多くの謎の解明につながる第一級の史料。さらなる研究を期待したい」と国宝への答申を喜んでいる。
西岡課長によると、聖教とは中世から江戸時代にかけて寺院などで書き写された書物。紙は貴重だったため、こうした聖教は、手紙(文書)の裏側を使って作られた。
県立金沢文庫は、聖教に使われた古文書を復元するとともに聖教を分類、整理し、詳細な目録を作成してきた。
称名寺聖教も金沢文庫文書も重要文化財の指定を受けていたが、新たに発見された聖教などを追加し、史料群の全体像が把握できるようになった。
その結果、称名寺聖教1万6692点、金沢文庫文書4149通が国宝として答申された。
西岡課長は「蒙古襲来以降の鎌倉を知ることができる史料は非常に少ない。今回、国宝に答申された書類群は桁違いに数が多い上に、幕府中枢の私的な手紙がほとんど。今でいう有力政治家の日記で、幕府の内情を伝え、武家の文化を解明する上で非常に貴重だ」と話している。