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実体験を作品に
心の内の戦禍への思い 「画家と写真家のみた戦争」展

カルチャー | 神奈川新聞 | 2016年2月29日(月) 11:26

宮本三郎の「死の家族」(右)が展示されている一角=宮本三郎記念美術館
宮本三郎の「死の家族」(右)が展示されている一角=宮本三郎記念美術館

 戦争という特殊な体験を画家や写真家は、どのように捉え、表現したのか。画家の宮本三郎(1905~74年)、向井潤吉(1901~95年)、久永強(1917~2004年)、写真家の師岡宏次(1914~91年)の作品計56点を紹介する「画家と写真家のみた戦争」展が、世田谷美術館分館の宮本三郎記念美術館(東京都世田谷区)で開催中だ。時の経過の中で、それぞれの心の内で醸成した戦禍への思いをくみ取ることができる。

 師岡は、爆撃の痕も生々しい銀座の町を写真に収めた。一方で、フィルムや写真機材を疎開させた武蔵野では、戦中も変わらない穏やかな農作業の光景に救いを見いだし撮影した。

 戦前の宮本と向井は、自由な画風を尊重する二科展で作品を発表し、共に渡欧して西洋絵画に身近に接した経験を持つ。戦中はその優れた画力を評価され、従軍画家として戦地へ赴いて兵士の姿をスケッチし、軍の依頼に応えて多くの作戦記録画を制作した。

 同年代の他の画家らと同様に、こうした戦争画の制作に励んだ二人だったが、戦後、それらの記憶はそれぞれの身の内に深く取り込まれていった。

 戦後、宮本が数年をかけて取り組んだ「死の家族」には、息絶えて横たわる若い半裸の男性と嘆く家族の姿がある。西洋美術のモチーフの一つで、キリストの遺体を抱いて悲しむマリアを表すピエタを思わせる。「痛ましい悲劇的な前代」を前提に描いたという。

 向井は、行き場のなくなった復員兵の姿を「漂人」に描いた。おびえた表情とぼろぼろの服に草履というみすぼらしい姿が見る者の胸を突く。当時、実際にこうした復員兵が存在した世相も表現している。

 どちらの作品も、画家として再出発するために自らの体験と向き合った結果であり、重要な作品になった。

 圧巻は4年間のシベリア抑留体験を、戦後40年以上を経て油彩画に描いた久永強だ。74歳から2年がかりで43点を残した。

 熊本でカメラ店を営み、60歳で油彩画を習い始めた久永の画風は素朴だ。だが、「塀の向こうは日本海だ」と錯乱して夜中に裸で高い塀を登り始めた戦友の姿など、極限状態に置かれた痛ましい体験を赤裸々に描き出している。会場では10点を展示。絵に合わせて久永自身がつづった言葉が並び、過酷な状況が目に浮かぶ。

 同館の竹内まゆ学芸員は「戦争がテーマというと戦争画がすぐに思い浮かぶが、戦争をめぐるこうした幅広い表現があることを知ってほしい」と話した。

 3月21日まで。祝日を除く月曜休館。一般200円、高校・大学生150円、65歳以上と小・中学生100円。問い合わせは同館電話03(5483)3836。


久永強「戦友(とも)を送る・冬」(1992年、世田谷美術館蔵)
久永強「戦友(とも)を送る・冬」(1992年、世田谷美術館蔵)

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