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2月5日まで茅ケ崎市美術館
響き合う感性 森栄二+森京子展

カルチャー | 神奈川新聞 | 2017年1月18日(水) 11:29

森栄二(右)と森京子。自宅の家具を持ち込んだ一角で =いずれも茅ケ崎市美術館
森栄二(右)と森京子。自宅の家具を持ち込んだ一角で =いずれも茅ケ崎市美術館

 葉山町にアトリエを構える彫刻家の森栄二(49)と画家の森京子(47)。同じ空間で制作し、夫婦としても支え合う二人の作品展「森栄二+森京子展 かすかな光・覚めて見る夢」が、茅ケ崎市美術館(同市東海岸北)で開催中だ。栄二の彫刻とドローイング、京子の油彩画など195点が並び、それぞれの感性が響き合った静かな時間が流れている。

 「今回の二人展をやってみて、二人で一つのチームというとかっこよすぎるけれど、芸人さんのようなユニットのようなところがあるなと思った」と栄二。

 京子は創作活動について「それぞれが暗闇の中を歩いていて、時々『あ、それいいね』と相手の姿を見る。そんな感じ」と表現する。

 1999年から茅ケ崎市で暮らし、2004年に葉山町へ転居。古い一戸建ては床が傾いており、床板をはがし車用のジャッキを使って土台を水平にするなど、自分たちでリフォームした。「まだ終わらない」と笑うが、手を掛けたぶんだけ愛着も深い。

 そんな大好きな家の空間を会場に持ち込んだ一角では、自宅の家具を使って展示。京子は「気に入って自宅に置いている家具は、二人の脳内を見せるようなもの」と話す。

 趣のある古い木製の飾り棚の上に、ブリキのおもちゃの要素を取り入れた京子の立体作品が置かれ、ガラス戸の中の棚には、栄二の作品で目を伏せた二人の少女像が並ぶ。それぞれの作品には存在感があるが、うまく調和している。


彫刻と絵画が調和した雰囲気を醸し出す会場
彫刻と絵画が調和した雰囲気を醸し出す会場


 栄二は多摩美大でグラフィックデザインを専攻した後、東京芸大大学院で仏像の保存修復を学んだ。その経験を生かした一木造りによる木彫の人物像には、研ぎ澄まされた仏像のようなたたずまいと、鮮やかな服の模様といったデザイン的な視点が垣間見える。

 自ら撮影した1万枚を超える写真のストックから、ドローイングを描く。彫刻にしたいものではなく、純粋に描きたいものを描く。その中から立体にしたいと思ったものを彫刻にする。

 対象は動植物や子ども。ふ入りのツワブキの葉をそのまま写し取った木彫「永遠の5月」には、一瞬を切り取り、その時の空気感まで凝縮してとどめようとする思いが込められている。

 「はだかの王子様」と題したシャンプーハットをかぶる子どもの裸体像は、めいがモデルだ。「子どもじゃないとぴんとこない」と栄二。早くに祖父母や父を亡くし、満たされない子ども時代を過ごした自身の経験が影響しているかもしれないという。

 一方の京子は、現実の風景や巨大な建物などをモチーフに、空想を膨らませたシュールレアリスム的で幻想的な光景を油彩画で手掛ける。「具体的なモチーフがあると自信を持って描ける。何もないところから夢想すると不安」と語る。無表情な登場人物も夫婦でポーズを取り合い、写真に撮って参考にしている。

 「子供製造工場」という不穏な題名の作品は、横浜市鶴見区生麦のビール工場で見た貯蔵タンクなどがモチーフ。水泳パンツ姿の人物が描き込まれ、謎めいた雰囲気を醸し出す。

 題名にも言葉のシュールレアリスムを取り入れている。「不思議な雰囲気が出ればいいので、必ずしも作品とタイトルはかみ合わなくてもいい。ただし作品とタイトルの二つが響き合って一つの空気を醸し出すようにしたい」

 現実を超えた幻想的な京子の作品と、写実的な栄二の作品は相反するものと思われがち。だが、実際に作品が並ぶと、共通する穏やかさをまとった不思議な世界が生まれている。

 2月5日まで。月曜休館。一般500円、大学生300円。問い合わせは同館電話0467(88)1177。

 
 

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