
崩落の恐れがあるとして鎌倉市が開削を計画している素掘りの「北鎌倉トンネル」について、トンネルのある尾根が中世以来の景観で、中世から近世にかけて鎌倉の領域を区切った要衝だったと推定されることが、専門家の調査で11日までに分かった。「世界遺産を目指す鎌倉にとって重要な遺産で、史跡として位置づけ、安全性と両立させて残すべきだ」との声が上がっている。
トンネルは80年以上前に掘られ、JR北鎌倉駅脇にあることから観光客や住民から「緑の洞門」などの愛称で親しまれた。市は風化による岩壁の剥離を理由に昨年4月、通行止めに。同8月には、安全性に不安が残るとして、トンネルを開削し尾根を切り崩して擁壁にする方針を決めた。
尾根の来歴を指摘したのは、歴史学者や市民などでつくる「北鎌倉・円覚寺の谷戸景観の保存を求める有志の会」。同会によると、尾根は1334年ごろの作とされる国重要文化財「円覚寺境内絵図」に描かれていた。江戸時代の絵図「山之内図」「坪数並諸建物之絵図」からは、尾根が中世以降、同寺を含む鎌倉地域を外界から隔てる存在だったとも推定されるという。
同会は(1)古絵図と一致する景観が現存することは貴重(2)世界遺産登録を見据え円覚寺に関する史跡をより拡大すべき-とし、こうした研究成果を今月のシンポジウムで発表する。
日本史が専門で、鎌倉世界遺産登録推進協議会の広報部会長を務めた内海恒雄さんは「尾根は国の史跡にすべき景観だ」と強調。「中世から近世にかけての『鎌倉の玄関口』という重要な場所に当たる上、鎌倉特有の谷戸地形もよく残っており、日本遺産や世界遺産登録を目指す鎌倉には欠かせない」と訴える。
シンポジウムは13日午後2時から、鎌倉駅東口「きらら鎌倉ホール」で。参加費千円、18歳以下無料。問い合わせは同会電話090(5811)7646。
