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 横浜と六本木で
村上ワールド全開

カルチャー | 神奈川新聞 | 2016年2月10日(水) 11:45

雑多な収集品に囲まれた村上隆=横浜美術館
雑多な収集品に囲まれた村上隆=横浜美術館

 現代美術家の村上隆に関する展覧会が、横浜と東京で開かれている。オタク文化などのサブカルチャーを美術に取り入れ、東西の文化を交差させるなどユニークな取り組みを行う村上。独自の審美眼によって収集した他作家の作品を見せる展覧会と、工房システムを指揮して「五百羅漢図」を描いた巨大な作品の展覧会という二つの側面から、村上の世界観に迫っている。


 村上のコレクターとしての姿を紹介し、その美の源泉を探るのは、横浜美術館(横浜市西区)での「村上隆のスーパーフラット・コレクション-蕭白、魯山人からキーファーまで-」展。現代美術を中心に、陶芸品、民芸資料など約400点を展示している。

 時代やジャンル、また選別しようとする意図を超えた“スーパーフラット”な目線で事物を捉えようと提案。例えば、使い古された刺し子のぞうきんが並ぶ一角には、江戸中期の禅僧・白隠の掛け軸や北大路魯山人の茶わんも並ぶ。

 村上が収集を始めたのは約10年前。海外出身の力士がひたすら技を磨いて稽古に励むのと同様に、自分も海外で美術家として活動するためには、稽古が必要だったという。収集はその稽古に当たり、当初は欧米の現代美術品が中心だった。

 「現役の芸術家として、存命中はできるだけ成果を残し続けなければならない。そのためのトレーニングがコレクションになった。10年分の成果が、僕自身の作品とステータスとして現れている」と村上。

 総数が5千点以上になる収集品は、個人の収集の枠を超えている。テレビや画集で見て気になった作家や作品を調べ、画廊に問い合わせることもあるという。村上の関心は、作品はもとより、価値の生成がいかになされるのか、という点にも寄せられる。美術市場での価値の有無が入り交じった、玉石混交のコレクションの形成は、こうした値付けの実験結果でもある。

 ゲストキュレーターの三木あき子は「村上隆というある視点を通して、今まで関連性のなかったものがつながってくる、そんな美の体系が生まれるのではないか」と期待を寄せた。

 4月3日まで。祝日を除く木曜休館。一般1500円、高校・大学生900円、中学生400円、65歳以上1400円。問い合わせは同館電話045(221)0300。



 東京・六本木の森美術館で開催中の「村上隆の五百羅漢図展」には、釈迦(しゃか)の弟子として教えを広めた500人の羅漢たちを高さ5メートル、幅全長100メートルを超える巨大絵画に描き上げた「五百羅漢図」など、新作を中心に約50点が並ぶ。

 「五百羅漢図」を制作するきっかけは、東日本大震災だったという。村上は「震災で子どもを亡くした漁師さんが、子どもは空から見ていてくれると話していた。そう信じることで子どももまた救われる、と。そこに宗教の発生の原初みたいなものを感じた」と振り返る。美術と宗教との関係性に以前から興味を持っており、描くタイミングが合ったという。

 中国の古代思想で東西南北をつかさどる神獣の青竜、白虎、朱雀、玄武の名を付けた4面で構成。江戸時代の絵師、狩野一信などの「五百羅漢図」を参考にしたというが、村上の画面には、個性あふれる多様な姿の羅漢たちや空想上の動物たち、鬼などがダイナミックに躍動する。朱雀には手塚治虫の「火の鳥」のイメージが重ねられ、ジブリ作品に登場するシシ神が描き込まれるなど、アニメや漫画の影響も見られる。

 制作には工房システムをとり、学生など約200人のスタッフを組織して24時間シフトを組んだ。短期間での制作を可能にしたのはコンピューターを使った精細な下絵だ。会場にはこうした下絵や指示書も並ぶ。

 鎌倉市在住の美術史家、辻惟雄は「超ハチャメチャ、怪々奇々、めっぽう元気で力強くユーモアがある。だがしっかり構図ができている。全国から助っ人として集められた画学生のエネルギーがこもっている」と評した。

 3月6日まで。一般1600円、高校・大学生1100円、4歳以上中学生以下600円。問い合わせはハローダイヤル03(5777)8600。

 なお「狩野一信の五百羅漢図展」を、増上寺宝物展示室(東京都港区)で3月13日まで開催。火曜休館。一般700円。問い合わせは同室電話03(3432)1431。


迫力いっぱいの「五百羅漢図」を展示する一角=森美術館(©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co.,Ltd.All Rights Reserved.)
迫力いっぱいの「五百羅漢図」を展示する一角=森美術館(©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co.,Ltd.All Rights Reserved.)
 
 

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