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【照明灯】原節子

カルチャー | 神奈川新聞 | 2015年11月27日(金) 12:08

照明灯
照明灯

 12月12日の、朝まだきころ。北鎌倉・円覚寺の階段を静かに上って行く老女がいる。ショールに隠れた横顔に憂いと気品があり、手には深紅のバラ。やがて、老女は目指す墓にたどり着く▼小津安二郎監督の命日である。一文字「無」と彫られたその墓にバラを手向け、手を合わせるのは、小津芸術の華、原節子さん。小津監督は、カラー作品の画面に「赤」を置くことを好んだ▼実は、そんな光景を見た人は一人もいない。独身で逝った名匠と、独身を通した原さん。彼女こそ、小津監督の相手にふさわしい。師の亡き後、人知れず引退したこの大女優は小津監督に殉じたのだ-。ファンの熱い思いが“12月12日の円覚寺伝説”を生んだ▼原節子さんが亡くなった。初めて小津映画に出演した作品は「晩春」。顔合わせの時、小津監督が少年のように頬をポッと赤らめたという。以後、原さんは「麦秋」「東京物語」などで小津芸術を支えた。「彼女を大根(役者)という人がいるが、とんでもない。役のつかみ方は確かで深い」とは小津監督の見立てだ▼好きなものは「読書、次が泣くこと、ビール、怠けること」と率直な原さん。泉下の小津監督は好みの日本酒・ダイヤ菊、原さんはビールを2人で静かに飲んでいるだろう。

 
 

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