
俳優の森山未來(31)が「ジョジョの奇妙な冒険」で知られる荒木飛呂彦の短編マンガを原作にした舞台「死刑執行中脱獄進行中」に主演、死刑宣告を受け監獄から脱出しようと試みる男を演じている。天王洲銀河劇場(東京都品川区)で29日(日)まで。
「オレはやっていない!」。叫ぶ森山の思いを燃やすように、激しいドラム音が響き渡る。緊迫する客席。カメラをのぞき込んだ森山の顔が舞台後部の白い布に大きく映し出される。
自由を認められない監獄。しかし、男が身を置く場所にはソファ、テレビ、テーブル、棚、バスタブがしつらえられている。異質な空間の中で次々に起こるズレが、森山をいらつかせていく。ドラム、キーボードなどを設置したステージでは、演技に合わせて音が鳴り響く。怒り、嘆き、不安。動きとわずかにズレる音が、観客を知らぬ間に始まっていた死へのカウントダウンの中に引き込んでいく。
母がダンススタジオを経営していたことから、幼い頃から踊りに親しんでいた森山は2013年、「文化庁文化交流使」としてイスラエルに単身滞在。現地に拠点を置くダンスカンパニーで活動するなど技を磨いた。引き裂かれるような悲しみ、絶望、動揺。さまざまな感情を躍りで表現する。
羽のようにふわりと浮かんだり、水が滑り落ちるように床に身体を沈ませたり。言葉を発しなくても、身体のエネルギーでそれを想像させる。高い身体能力で自らを自在に操る様はまるで重力さえも抑え込み、本来あるべき頭や体、手足の位置をあいまいにする。6人の男性ダンサーとシンクロして動く姿は、他者と自分自身の境界さえもあやふやにした。
「観たことのない世界観の舞台になればいい」と開幕前に話した森山。「身体や言葉だけに頼り切ることなく、ひとつひとつのマテリアルをどれだけフラットに捉えながら、作品世界を構築できるか」と意欲を見せたとおり、観た者を圧倒する仕掛けにあふれている。構成・演出・振り付けは長谷川寧。東京公演後、12月2日の宮城を皮切りに、広島、大阪など全国ツアーを予定している。












