伊勢原市の旧家で、鎌倉幕府の倒幕などで知られる新田義貞の子孫とされる新田堀江家が3日、所有する土地や家、古文書などの史料を市に寄贈した。堀江家は江戸期以前に同市西富岡に移ってきたとされ、所蔵する古文書などは歴史的価値が高いという。32代当主として寄贈を決めた堀江政伸さん(83)は「市民のために活用してほしい」と話している。
市に寄贈されたのは約4千平方メートルの土地、住宅、長屋門などのほか、約4300点の古文書、医療器具や絵画など約600点。住宅や長屋門などは近年になって建て直されたものだが、古文書などの史料は地域史の変遷を記した歴史的価値が非常に高いという。
新田堀江家は上野国(現在の群馬県)の清和源氏の一門・新田義重を始祖とし、鎌倉幕府を倒した義貞らを経て現在に続く。勢力争いの中で堀江と姓を変え、戦国末期に現在の伊勢原に移ったとされる。
特に江戸期は名主として村政をつかさどり、多くの歴史的資料が系統的に保存されてきた。市文化財課は「名主も多くが途中で代わったり移ったりする。約450年にわたって同じ場所で続いている家は珍しい」と話す。すでに県や有志の研究家により古文書の多くが整理され、市史などに反映されているという。
水戸黄門として知られる徳川光圀からの文書など、地域史にとどまらない史料も数多く残る。同課によると土地と建物だけでも約1億円相当になるといい、「査定のつけようがない貴重な史料を含め、市が寄贈を受けたものの中で最も規模が大きい」と話す。
20年にわたって市教育委員も務めた堀江さんは、自らの年齢や膨大な史料を管理する困難さもを踏まえ、「伊勢原には文化財などを保存する施設がないので、この建物や史料を生かしてくれれば」と話しているという。
市は一般公開を前提に活用法を検討するという。