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釣趣、極上の味が魅力
トホホ釣り日誌【5】東京湾のショウサイフグ釣り

カルチャー | 神奈川新聞 | 2015年9月1日(火) 17:30

船内トップの遠藤温さん。最初に大型を釣り上げ、誇らしげだ
船内トップの遠藤温さん。最初に大型を釣り上げ、誇らしげだ

 カワハギにも勝るとも劣らない釣趣と極上の味を秘めるのが東京湾のショウサイフグだ。エビでタイならぬフグを狙い、「カットウ仕掛け」という特別な仕掛けで攻める釣りだが、約70年前、東京湾が発祥といわれている。金沢・野毛屋釣船店の故黒川忠治船長はこの釣りの草分け。その遺伝子を受け継ぐ、孫の健太郎船長の船に乗り込み、たっぷりと醍醐(だいご)味を満喫してきた。

 ショウサイフグはじめフグとカワハギは親類の魚。フグもカワハギのように上下に泳げて、おちょぼ口で餌をついばむので、食いつく感触もかすかで、釣り人が知らぬ間に餌を失敬していく魚でもある。プクーっと膨れて愛嬌(あいきょう)があるが、針掛かりさせるのが難しく、カワハギ釣りと並び、釣り人を熱くする釣り物だ。


「3秒間」の静止

 平潟湾の船着き場から約30分で、難敵ショウサイフグが待つ千葉・大貫沖に。ネットで仕入れた釣り方で挑んでいると、健太郎船長が飛んできて、「記者さんそれじゃ釣れないよ。こうやるんだよ」とレッスン開始。

 まず、エビ餌を付けた仕掛けを目の前に落とし込む。重りが海底に着いて「コツン」という感触があったら、さおを胸の前ぐらいに持ち、海面と平行にする。道糸が少したるむぐらいにリール巻き、この状態から20センチぐらい「サッ」としゃくる。

 ここで重要なのは、「フグに餌を認識させ、食いを誘うため、3秒間仕掛けを海底で静止させること」。あたりがなければ、3秒間隔でこの動作(空あわせ)をくり返し、あたりがあればさおを立てて針がかりさせる。

 「今日のように風や波があるときは、さお先を斜め上に上げ、目の前に持ってきて、同じ動作をくり返して」と教えてくれた。


二番手の井上憲さん。大型交じりで34匹を釣った
二番手の井上憲さん。大型交じりで34匹を釣った

記者さんうまい


 船長から手ほどきを受け、再スタートした記者。10回ぐらいしゃくっていると、「コツコツ」という小さなあたり。「これだーっ」と思い切りさおを振り上げたところ、「ガッ」という手応え。さお先がギュンと曲がり、ギュルギュルとリールを巻き上げると、ググン。ググンと左右に泳ぎ、抵抗する。

 リールを巻きながらワクワクして待っていると、海面を透かして茶色の魚影が見える。本命のショウサイフグだ。「グウグウ」と無念の鳴き声を上げて釣れたのは20センチ級だった。

 ここから、矢継ぎ早に3匹釣ると、隣の釣り人から、「記者さん。釣りうまいね」と声を掛けられた。長年、釣りを担当しているが、こんなことは初めて。「ヤッターッ」と大声を出したい気分だった。


「左右に走って抵抗したよ」と釣り上げた魚を見せてくれた二村裕次さん
「左右に走って抵抗したよ」と釣り上げた魚を見せてくれた二村裕次さん

二刀流で狙う


 さて、記者を夢中にさせたショウサイフグ釣り。発祥のころは餌にアオヤギのむき身を使い、しゃくりももっと大きかったという。餌としとてアオヤギより、エビ(現在は冷凍のアルゼンチン赤エビ、以前はサルエビ、甘エビなどを使用)のほうが釣れるため、約40年前ごろから変わっていったとのこと。

 仕掛けの全長は約50センチ。上から順に枝針丸カイズ13~15号2本、カットウ仕掛けからなる。独特のカットウ仕掛けは約25センチ。丸い10号重りの下にごついタイのテンヤ針15~16号が1本付き、一番下にいかり型をした針が1本ついている。枝針は食わせて釣り、カットウ仕掛けは体に引っかけて釣る。いわば二刀流の釣法だ。


独特なカットウ仕掛け。シヨウサイフグ釣りの知恵が詰まっている
独特なカットウ仕掛け。シヨウサイフグ釣りの知恵が詰まっている

フグ包丁師の免許


 船内トップの遠藤温さんや、2番手の井上憲さんは大型を連発。記者もと思ったが、大物がかかる率が高いカットウ仕掛けにどうしてもあたりがこない。

 そうこうしていると、終了時間も近づいてきた。気になるのが「フグには毒があるけど、どうするの」という点。でも、ご心配なく、船長は料理人がフグをさばくため身につける県の免許、「フグ包丁師」を持っている。帰港間近、船上で肝など毒のある部分を取り除き、調理しやすい形にして手渡してくれるので、トラフグにも負けないショウサイフグを手軽に味わうことができる。


船長はフグ包丁師の免許を持っていて、毒のある部分を切除して手渡してくれる。右は白子
船長はフグ包丁師の免許を持っていて、毒のある部分を切除して手渡してくれる。右は白子

 この日は強風とうねりがあったものの、17~38センチのショウサイフグが1~37匹。珍しく釣果があった記者は7匹を釣り上げた。黒川船長は「絶品の白子はやせてきていますが、釣りはまだまだ楽しめます。上品な白身の刺し身は最高ですよ」と話している。


初挑戦で良型を手にした原浩祐さん
初挑戦で良型を手にした原浩祐さん

大型交じりで29匹を釣った疋田久史さん
大型交じりで29匹を釣った疋田久史さん

黒川健太郎船長のひと言
黒川健太郎船長のひと言

 半解凍したアルゼンチン赤エビが餌です。

 餌付けは頭を外し、しっぽの先端にある扇形の部分を切り取り、3番目の節まで残して殻をむき、むき身にします。

 切った先端の部分から針先を入れ、背中側に抜き、一回転。背わたに沿って針をおろし、3番目の節に針先を入れてください(イラスト)。


ショウサイフグの仕掛けと餌付け
ショウサイフグの仕掛けと餌付け

 エビ餌の付け方と釣り方は釣果に直結しますので、船が出る前に申し出てください。初心者の方含め、手ほどきしますよ。

 ショウサイフグは雄の白子(精巣)、白身も極上の味、しっかり冷やして持ち帰らないと、せっかくの楽しみが半減します。

 保冷剤やペットボトルを凍らせてクーラーに入れてくる方もいますが、フグの身が白くなり、台無しになりますよ。

 お薦めは船宿で氷を買って、船上で海水と交ぜて「水氷」を作り、フグの身をキンキンに冷やして持ち帰っること。そうすれば、釣り人ならではの豪華な一皿を堪能できますよ。

メモ
▽出船 7時15分
▽料金 9300円(餌付き)
▽その他 貸しざお1000円、カットウ仕掛け700円
▽野毛屋釣船店 電話045(781)5964

 
 

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