
解体の可能性が浮上した鎌倉市御成町の歴史的建造物、市立御成小の旧講堂について市は6日までに、外部委託した建築事務所による現況調査報告書の内容を明らかにした。耐震性は現行基準に合わないが、構造体は強固で「健全」と評価。耐震改修工事を施せば使用可能と結論づけた。
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報告書は、市内の「湘南建築工房一級建築士事務所」が3月にまとめた。
構造に関わる部分は、柱や梁の軸組みを中心に「劣化はなく健全」。木材や床下は乾燥し、シロアリの被害もなかった。しかし、屋根には雨漏りやボルトのさびが目立ち「今回の調査で最も劣化が見られる」と指摘。屋根をふくスレートには、アスベスト(石綿)の含有が確認された。
耐震性については、建築基準法が想定する大地震で「倒壊の可能性が高い」とした。一方、構造体は「大変強固な上に劣化や損傷は見られず健全」とし、金具で補強するなど「耐震改修工事を行えば引き続き使用が可能」と結論づけた。
さらに、保存活用を想定し「保存建築物の指定を受けて建築基準法の適用を除外した上で改修工事等の計画を進めることをお勧めする」と助言。「(現在の技術での再建は)非常に困難」と、当時の建築技術の高さも強調した。
旧講堂は1933年に完成した和風建築で、入り母屋や寺社風の屋根飾り、格天井などが特徴。市は96年、報告書に「そのまま修復保存して利用する」と明記したが、財政難などを理由に20年近く放置した。松尾崇市長は6月の市議会で「撤去も含め夏休み前までに方針を決定する」と述べた。
市内の建築家、菅孝能さんは、今回の報告書を受け「老朽化が指摘されたが構造に関わる問題ではなく、軸組みが大丈夫だと分かった。補強の方法はいくらでもある」と話している。