
箱根山(箱根町)の噴火警戒レベルが3(入山規制)に引き上げられてから最初の週末を迎えた4日、箱根を代表する観光スポットは、悪天候も影響してか普段のにぎわいは影を潜めた。「このままでは商売が続かない。でも…」。土産物店などから不安の声が漏れる一方、足を運んでくれた観光客をもてなそうと奮闘する姿も多く見られた。火山の恩恵に支えられた国内屈指の観光地は、独自の知恵で苦境に向き合っている。
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箱根登山鉄道の強羅駅前広場。温泉旅館のスリッパを使った卓球体験ブースが登場し、梅雨空の下に観光客の笑い声が響いた。
仕掛け人は、地元の飲食店経営者や旅館関係者らでつくる箱根強羅観光協会。強羅の温泉宿に湯量などの影響はないものの、客足はいつもより少ない。
田村洋一専務理事は「強羅を訪れてくれたお客さんにさみしい思いをさせたくない」。約10人のメンバーとともに法被姿で駅に立ち、最新の火山情報をまとめたチラシを配るなど観光客の不安解消も図る。
箱根の玄関口・箱根湯本駅周辺も、客足の減少を肌で感じている。「火山活発化で客が激減し、仕入れる鮮魚も半分に減らした。売り上げも3分の1に落ち込んだ」と嘆くのは、駅前ですし店を営む夫婦。それでも、「きちんと頑張っている姿を見せなくては。箱根は観光の町なんだから」と奮起する。
こうした町の姿に観光客の受け止め方もさまざまだ。強羅駅からカップルで箱根ケーブルカーに乗車した男子大学生(20)は「大涌谷に行けなくても楽しめるかなと思って来た。電車から見えるアジサイがきれいで最高」。「箱根寄木細工」の名産地・畑宿エリアの販売店「金指ウッドクラフト」で、寄木の製作を体験した東京都の男性(54)は、旅行の中止も考えたが旅館のキャンセルが相次いでいる状況を知り、「自分たちまでキャンセルしたら、大好きな箱根に打撃を与えてしまう。正しい情報を得れば大丈夫だと思った」と予定通り訪れたという。
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県道の通行規制に伴い代行バスが運休していた箱根ロープウェイは、6日から新ルートでバスを運行することを決めた。40~50分間隔で走らせ、桃源台駅と箱根登山鉄道強羅駅を約30分で結ぶ。「箱根フリーパス」利用者は無料で乗車できる。
●火山活動は活発な状態続く
大涌谷周辺の火山活動は4日も活発な状態が続いた。気象庁によると、6月29日以降に確認された新たな噴気孔からは白い噴煙が勢いよく噴き出しており、火山性地震も断続的に発生。大涌谷の約1キロの範囲内では引き続き、小規模な噴火に伴う噴石に注意するよう呼び掛けている。
局所的な地殻変動も継続している。人工衛星が捉えたデータを継続して分析している国土地理院によると、7月2日は6月18日と比べ、噴気孔の周辺で最大7センチの隆起がみられたという。
気象庁によると、4日の火山性地震は午後7時までに15回を記録。より微小な地震も捉える県温泉地学研究所は45回を観測している。