
男性デュオ「スキマスイッチ」が1月からスタートした全国ツアーの追加公演を、6月30、7月1日に日本武道館(東京都千代田区)で開いた。ステージでは昨年12月、約3年ぶりに発売したアルバム「スキマスイッチ」に収録した「パラボラヴァ」「星のうつわ」などを中心に、全21曲を披露。ボーカル、ギターの大橋卓弥(37)は、「音楽をみんなで楽しんでいる感じがします。これからも一緒に音楽を楽しんでいきましょう。音楽って素晴らしい」と満員の客席に呼びかけた。
--1966年の同日。武道の殿堂に英国のバンド「ザ・ビートルズ」が立ち、ロックコンサートを初開催した。以後、同地は“ロックの聖地”として多くのミュージシャンにとってあこがれの場所になった。幼いころからビートルズが好きだと公言している大橋は、同日にライブを行ったよろこびを隠せない様子で、1日の公演前には「鼻血が出た」と告白。「また出ても歌い続ける」と意気込み、約3時間に渡るステージを全力でこなした。
2人は2003年7月、シングル「view」でメジャーデビュー。音楽を作るときは「背伸びをせず、その時の等身大の音楽を奏でていこう」と約束した。37歳。不惑の年に近づいたいまだから、感じ歌うことができるものは何か。届く言葉を探している。聴き手がその瞳に何を映し、自分たちのライブ会場に来たのか。それを知りたいと、電車に乗って会場に入ることもある。
最新アルバムの中では、《生きるっていうこと それはきっと 少しずつ 手放していくこと》と、生命についてつづった「星のうつわ」の中で歌う。大橋は「もうすぐ(デビュー)13年。昔の僕らには似合わないと思っていた言葉も、いまなら伝えられるかなと、歳が言葉に追いついてきた。歳を重ねるごとに使える言葉が増えている」と振り返っていた。
約3時間の公演のうち、約30分ほどはファンに感謝を伝える時間に充てた。身体いっぱいで伝えたい。大橋はギターをかき鳴らし、頭を大きく左右に振りながら感情をあらわにして歌う。怒り、悲しみ、切なさ、愛。並ぶ常田真太郎(37)は「地に足をつけて」を体現するかのように、はだしで鍵盤に向かっていく。
全国ツアーは神奈川・北海道・大阪・沖縄など32公演を展開。チケットは全会場が完売し10万人を動員した。「新しい曲を作って、いや、作らなくてもまたライブはやりたい」と大橋。鳴りやまない拍手に常田は「また来ます」と再来を誓った。6日には「大阪城ホール」(大阪市中央区)で千秋楽を行う。
終演後も思いは止まらなかった。
額の汗をぬぐった常田は、「音楽のすばらしさを1曲1曲、1音1音に感じたライブだった」と感慨。「最後の曲ではもう泣きそうで、でも親父に『男はなくもんじゃない』と言われていたから、こらえていたけど。でももう泣いちゃってもいいんじゃないかという気持ちでいて。そのとき相方(大橋)を見たら、目がうるんでいたから。あぁ同じ気持ちでいるんだなと感じて」と思いをぶつけた。
ツアーの多くは、新曲を出しその楽曲を引っさげた形で公演を行うことが多い。「新曲を作る」と公言した大橋は「アーティストにとって新曲は、作る度に自分たちの首を絞めるものだと思っています。前よりも良いものを出したいと思うので。最後はもう息もできないくらい苦しいものになるんじゃないかって思うこともある。でも求めてくれる人のために、頑張りたい」と気を引き締めていた。
2人が所属する事務所の社長は49年前の7月1日。武道館でビートルズを観た一人。49年前のチケットをいまも持っていると言い、大橋は「僕らの今日のライブの半券も49年後に持っている人がいて欲しい」と吐露。社長から「君らは6月30日と、7月1日に武道館に立ったけど、ビートルズは7月2日もライブをしたんだよ。君らは明日やらないからね。来年は3日間やってもらうから。新曲書けよ」とエール。2人は「えぇ、3日間! そんな簡単なものじゃないですよ!」と苦笑い。額には再び汗が噴き出していた。【西村綾乃】




