武家の都、鎌倉で花開いた喫茶文化をテーマに、当時の珍しい茶器などを展示する特別展「中世東国の茶」が県立歴史博物館(横浜市中区)で始まった。現代につながる茶の湯の源流を、武家社会の視点から解説している。
鎌倉時代から室町時代を中心に、茶の露天販売に関する記載が読み取れる国宝の古文書4点をはじめ、青磁や白磁の茶器や花瓶、書画など約263点を展示。見どころの一つは、日本で現存最古、南宋時代(13世紀半ば)に作られた「茶臼」。蒸した茶葉をひき、抹茶にした道具で、現在のものと同じ形をしている。
茶は奈良時代に遣唐使とともに中国から渡来。当初、仏事の供物として粉末を固めた煎茶が用いられ、飲み方にも厳しい作法があった。
源頼朝が鎌倉に幕府を開き、京都の伝統にとらわれない新たな武家文化が勃興すると、茶の文化にも変化が生じた。武士らの菩(ぼ)提(だい)寺となった禅宗の寺で抹茶を飲む習慣があったことから、茶と武士が結び付いた。それまでのような作法とは関係なく、嗜(し)好(こう)品として茶が楽しまれるようになった。
その後、南北朝時代になると、戦場で休息のため茶を飲むなど、喫茶の習慣が定着。茶筅(ちゃせん)や茶臼といった茶道具も改良され、戦国時代、千利休が茶の湯を大成していく。
永井晋専門学芸員は「今回の展示は千利休以前に焦点を当てた。僧侶や上級武士の間で、茶を贈答品とすることが行われるなど、茶を飲む文化の広まりを追った」と話している。
6月21日まで。一般900円。問い合わせは県立歴史博物館電話045(201)0926。