横須賀市出身で米ニューヨークを拠点に活躍を続け、昨年5月に89歳で亡くなった画家・木村利三郎さんの追悼作品展が7日、同市西逸見町のウェルシティ市民プラザで始まった。故郷で4回目となる個展開催の準備中に急逝した木村さんをしのび、開会直後から多くの人が足を運んだ。2日間の日程で、8日午後5時まで。入場無料。
木村さんは同市東逸見町生まれで、神奈川師範学校(現横浜国立大学)と法政大学哲学科を卒業。1964年に単身で渡米し、半世紀にわたってニューヨークで活動。都市の創造、崩壊、再生を主題に文明批判の視点も併せ持った作品は、国内外から高い評価を得ていた。
2001年9月11日の米中枢同時テロは、1キロほど離れた自宅で目撃。くしくも、渡米以来描き続けてきた情景が、眼前に出現した。08年には本紙の取材に、「資本主義、格差社会など、都市を見ているとさまざまなものが見えてくる」と語っていた。
横須賀での個展開催は傘寿を過ぎた05年が初。4回目の準備をしていた昨年5月、老衰のためニューヨークで他界。個展を機に帰国する予定で、故郷での親睦を楽しみにしていた。
追悼展では、実行委員会が市内や福井県内のコレクターから借り受けた版画や油彩など90点を展示。長く暮らしたニューヨークや、シドニー、バンコクといった海外の都市に加え、近未来の横須賀をイメージした作品も展示されている。
実行委代表で、木村さんから亡くなる5日前にも手紙を送られた田口義明さん(67)は「見知らぬ土地で50年も、絵一本で生活してきた生きざま自体がアートだと思う。こんな人が横須賀にいたことを、もっともっと多くの人に知ってもらいたい」と話した。
【神奈川新聞】