
女優の有村架純(21)が初主演した舞台「ジャンヌ・ダルク」が24日、「神奈川芸術劇場(KAAT)」(横浜市中区)で閉幕した。同作は、2010年に女優の堀北真希(26)主演、脚本・中島かずき(55)、演出・白井晃(57)という布陣で上演された舞台を、ジャンヌを有村に、シャルル7世を俳優の伊藤英明(39)から俳優で歌手の東山紀之(48)に変え行われたもの。10月の東京を皮切りに大阪など全29公演を展開し、約3万2000人を動員した。
仏ロレーヌ地方のドンレミ村で生まれたジャンヌ。農家の娘として育った少女は、13歳のときに「フランスを救え」という神の声を聞き、17歳で軍の最高司令官として男たちを指揮。19歳で火あぶりにされ地に散った。烈火のように生きるさまを演じた有村は、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」で名をあげた若手。舞台の経験はなかったが、「ジャンヌは、そのとき1番輝いている“少女”がふさわしい」と中島らの目に止まり、抜てきされた。
フランスの地を荒らすイングランド兵から自国を救いたい-。王太子シャルル7世の下へと出向いたジャンヌは、ランスで戴冠式を行うように提案。王太子がいるシノン城からランスへの道を開く第一歩は、占拠されたオルレアン城を取り戻すことだった。開放へ-。“有村ジャンヌ”が振る旗に奮起した100人を超える“死兵”は、1~3階の客席通路に並び、客の真横で勝ちどきをあげた。座席横の通路を剣を手にした兵士が舞台へと駆け上がる。ステージに立てられた城門が仏軍により破られ、中枢へ人がなだれ込んでいく。白熱した戦いに、鼓動が速くなる。兵士たちの額には、吹き出す汗。会場を巻き込んだ白井の演出により、兵士と観客の心音が重なっていく。「フランスは勝つ。必ず勝ちます!」と叫ぶジャンヌの声に、会場が一体となり燃え上がった。
「がむしゃらな気持ちで、ひとつの目標に向かっていく姿を見せられたら」と公演前に意欲を語った有村。戴冠式の後、神の声が届かなくなったあとも、「その沈黙に意味があると信じ、ひとりで戦う」と平和を願い、前を見続ける姿は人々の心を打った。火刑台に吊し上げられ、真っ赤な火の中で消えた“ラ・ピュセル”へ-。りんとした姿に、観客は立ち上がって拍手を送り続けていた。
KAATでの公演は白井が同会場の芸術参与を務めている縁もあり、23、24日に開催。白井の次回演出作品は12月11日から、東京・日比谷シアタークリエで幕を開ける「ロンドン版 ショーシャンクの空に」で、俳優の佐々木蔵之介(46)が主演する。
