
年間観光客数2300万人を数える世界最大のチャイナタウン、横浜中華街。メーン通りには華やかな装飾を凝らした中華料理店などが並ぶが、裏通りに入れば、華僑の人々の生活空間が広がっている。この街の魅力の一つでもある“生活感”を切り取った写真展「横浜中華街の日々」が26日から、中華街内の爾麗(にれい)美術で開かれる。
撮影した写真家の横山和江さん(29)=横浜市中区=は中国・福建省で生まれ、9歳だった1994年に横浜へ移り住んだ。母が日本人男性と再婚したためだ。和江の名は「日本(和)と中国(長江)の懸け橋になる人に」と日本の祖父が付けてくれた。
転入した横浜山手中華学校(同区)には、中華街で暮らす子どもたちが多く、放課後の遊び場は中華街だった。古い民家がひしめく路地裏は故郷にそっくりで、「街自体が私を温かく迎え入れてくれる家のようだった」と振り返る。
その街を写真を通じて見つめ直したいと、昨春から撮影を始めた。
今も中華街で暮らしながら、赤ちゃんを育てたり、中国舞踊を教えたりする同級生らの生き生きとした姿。お年寄りがおしゃべりしたり、子どもたちがブランコに乗ったりして過ごす公園の風景。ランドセルを背負ったまま、寄り道している小学生の姿はまるでかつての自分のようだ。昔ながらのゆったりとした時間の流れを表現したくて、あえてフィルムで撮影した20枚を展示する。
2004年のみなとみらい線開通や羽田空港の国際化などで横浜中華街の客層は変化し、店舗の入れ替わりも激しい。複合施設も増え、テーマパークのようになったと言う人もいる。
でも、路地裏には昔から変わらぬ人々の暮らしがある。
「中華料理店だけではなくて、そこに人が住み、生活や文化があるのが横浜中華街の魅力。生活感が醸し出す街の温かさを知ってもらいたい」と横山さんは話している。
写真展は8月10日まで。入場無料。水曜休館。問い合わせは爾麗美術電話045(222)4018。
【神奈川新聞】