大井町で言い伝えられている民話を基に、地元住民が制作した紙芝居の発表会が25日、同町金子の町生涯学習センターで行われた。題材は、地域住民が現在も通る坂を守るといわれる「袖切り神」。町内外から約50人が集まり民話の世界に引き込まれた。
紙芝居は、文と構成を担当した町郷土史研究会副会長の清水幸子さん(70)と、イラストを描いた町文化財保護委員の宇田川聖一さん(79)で制作。1月に町から依頼され、2作目となる。
A3用紙で10枚にまとめた紙芝居は、同町から伊勢原市の大山に向かう際に通る長い坂道の「赤坂」が舞台。かつては道の両側が木々で覆われ、昼でも薄暗い道だった。
怖がる通行人は「袖を置いていけぇ」という声を聞き、驚いてその場から走り去るが、気付くと袖が切られていた。しかし、袖を切るのが地域を守る神様と知り、感謝の気持ちを持つ-という内容。登場人物の表情などがコミカルに描かれ、清水さんが抑揚をつけて読み聞かせた。
現場に数回足を運び、物語の情景をイメージしたという清水さんは「地域ののどかさを感じながら優しい文章を心掛けた」。宇田川さんは「恐ろしい雰囲気ではなく、ファンタジックな絵にした」と、作品への思いを話した。
発表会に参加した同町山田の女性(66)は「話の内容は怖いけれど、穏やかな気持ちになった」と話していた。
【神奈川新聞】