川崎市麻生区に練習拠点を持つ日本初の本格的なオペラ団体「藤原歌劇団」が、6月に創立80周年を迎える。戦中戦後の混乱期を乗り越え、これまでに約90作品を上演。「地域に支えられ発展してきた。恩返ししたい」と記念公演やコンサートを企画している。
同歌劇団は1934年6月7日、テノール歌手藤原義江さんらが日比谷公会堂で「ラ・ボエーム」を上演し旗揚げした。以来、イタリアオペラを中心に日本初上演となる30作品を含む約90作品を披露してきた。
第2次大戦勃発後も公演を続けたが、43年には空襲警報で大阪公演が中止となった。終戦まで活動は中断したが、戦後すぐに再開したという。
麻生区に練習場を移したのは89年。日ごろから声楽や所作の稽古が行われている。都内や海外で公演する傍ら、「川崎・しんゆり芸術祭(アルテリッカしんゆり)」などでも定期的に上演。地元高校の合唱部の生徒が歌劇団の合唱団に交じり、公演に参加したこともある。
80周年を迎える6月7日は、旗揚げの場となった日比谷公会堂で歌劇団所属のソリストと合唱部による記念コンサートを、同月27~29日には記念公演として新国立劇場でプッチーニ作曲の「蝶々夫人」を上演する。
記念公演でヒロインを演じるソプラノの佐藤康子さん(36)は「由緒ある藤原歌劇団で、蝶々夫人を演じられるのは本当に光栄なこと。最高の舞台にするためにすべてを出したい」と意気込む。蝶々夫人を見守るシャープレス役の牧野正人さん(57)は「バリトン歌手として歌劇団と地域の皆さんに支えられ育てられた。ご恩返しをしたい」。
同歌劇団が属する日本オペラ振興会常務理事の下八川共祐さん(72)は「これからも地域と連携しながらオペラの素晴らしさを広めていきたい」。蝶々夫人はオペラ初心者でも分かりやすい演目と、記念公演への来場を呼び掛けている。コンサートと公演の予約・問い合わせは日本オペラ振興会チケットセンター電話044(959)5067。
【神奈川新聞】