17文字の芸術つむぎ半世紀-。川崎市麻生区の俳句結社「さざなみ」が創立50周年を迎えた。毎月発行している同人誌は一度も休刊せず600号に達した。200人を超える会員たちは、楽しみながら花鳥風月と言葉の世界を追究している。
さざなみに15ある句会の一つ「三水会」。会員たちは月に1回、麻生市民交流館(同区上麻生)に集まり、お題の季語を入れた自作を5句ずつ持ち寄る。5月は「燕(つばめ)の子」「風薫る」「新茶」だ。
「『燕尾(えんび)服まだ小さくて燕の子』はほほ笑ましくて、かわいらしい光景が浮かんだので選びました」
作者名を伏せ、参加者14人がそれぞれが気に入った7句を挙げる。さざなみ代表で講師役の池内英夫さん(84)が言葉の使い方などをアドバイスすると、メンバーたちはうなずいたりメモを取ったりした。
さざなみは1964年に地元の俳人、笠原湖舟と笠原古畦(こけい)が創設。会員らが投句する同人誌「さざなみ」は同年5月に第1号を出して以来、休むことなく、ことし4月に通巻600号を発行した。
古畦が亡くなり、2006年に池内さんが代表に。約230人の会員には90代もおり、入会したらやめる人はほとんどいないという。
「和気あいあいと楽しくやっているけれど、ただの仲良しクラブじゃない。俳句の定型から外れていたらこちらは指導するし、進歩しようと熱心に取り組むメンバーが多い」。50年続いてきた理由を池内さんはこう語る。
池内さん自身、銀行員として勤め上げ、定年後に俳句を始めた。「サラリーマン時代とは違うみやびな世界。たった17字だけど、やればやるほど新しい言葉が浮かんでくる。人間の幅が広がる奥の深い芸術です」
さざなみは新規会員を募集している。問い合わせは池内さん電話044(988)4812。
【神奈川新聞】