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【照明灯】夜と霧~知ることは超えること

カルチャー | 神奈川新聞 | 2014年3月10日(月) 00:00

1941年12月、ヒトラーは命令を下した。非ドイツ国民で、ナチスドイツ占領地でのドイツ軍に対する犯罪容疑者を夜間、秘密裏に逮捕して強制収容所に送り、消息を家族に知らせるな。彼は「夜と霧」命令と名付けた

▼夜陰に乗じて拉致し、霧のかなたに消す-。命令は後に拡大され、犠牲者600万人とされるホロコーストにつながった。収容所から奇跡的に生還した心理学者ビクトール・E・フランクルは体験を「夜と霧」(みすず書房)に著し、アラン・レネ監督は記録映画「夜と霧」を撮った

▼レネ監督の訃報に接して「夜と霧」の衝撃がよみがえる。大量殺人工場、アウシュビッツ。骨と皮だけになった死体の山をブルドーザーが処理する。毛髪の山、人の脂肪で作ったせっけん。紛れもない人間の所業だ

▼フランクルの著書も、吐き気を催す極限の地獄を突き付ける。人類史上かつてなかった悪の組織化。同書「出版者の序」に「かかる悲惨を知る必要があるのか」と悩んだことが記されている。が、「知ることは超えることである」と出版に踏み切った

▼その歴史的著書が感動的なのは、読むに堪えない悪行に覆われた世界にあっても、なお精神の高潔さを保つ人たちがいて、希望すら描かれているからだろう。

【神奈川新聞】

 
 

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