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和魂多彩~伝統芸能の世界~
紙切り芸人、即興の醍醐味 林家楽一の当意即妙

カルチャー | 神奈川新聞 | 2020年8月5日(水) 07:37

 横浜出身の紙切り芸人、林家楽一が9月26日、横浜にぎわい座(横浜市中区)に登場する。観客の注文に応じて人物や風景などを紙から切り抜いていく紙切り芸は寄席に付き物だが、メインの存在として公演を行うのは珍しい。「紙切りという芸の即興性を楽しんでもらいたい」と意気込みを語る。


観客の注文を受ける前の一枚は、時期に合ったものを切ることが多い。「夕涼み」は浴衣の女性の足や横顔に憂いを感じる作品=東京都内
観客の注文を受ける前の一枚は、時期に合ったものを切ることが多い。「夕涼み」は浴衣の女性の足や横顔に憂いを感じる作品=東京都内

 紙切りとの出合いは大学生のころ。現在の師匠である林家正楽の芸をテレビで見たことがきっかけだった。それまで伝統芸能や落語に興味はなく、手先も不器用だったというが「結婚式や会社の飲み会で披露する余興として身に付けたい」と思い、正楽の指導を受けようと決めた。

 ことし3月、紙切り芸人では史上初の芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した3代目林家正楽は日本の紙切り芸人を代表する名人だが「少年のようで、とても優しい師匠」。手本をもらって自宅で練習を重ね、実際の切り方は寄席の客席から師匠の実演を見て覚えたという。

 大学卒業後もアルバイトを続けながら練習に励み、数年後に「楽一」という名前をもらい芸人としてデビュー。2006年以降は定期的に都内の寄席などで紙切りを披露している。

 現在、寄席に登場する紙切り芸人は7人ほどで、切り方のスタイルもそれぞれ。正楽はおはやしに合わせて体を揺らし、軽妙なおしゃべりと共に紙を切っていくスタイルが特徴的だが、楽一のアクションは控えめだ。しかし独特の間の取り方と、楽しそうにはさみを進めていく様子が観客の笑いを誘う。「寄席で、落語家さんの合間に登場して耳を休めてもらうのが紙切り芸人の役目。自分の色を出すというよりは、引き立て役だと思っています」と謙虚に語る。

 紙切り芸の醍醐味(だいごみ)は「注文を受けて、その場で紙を切る過程そのもの」。「即興で切った作品だから、切り絵作家が作る、芸術性が高い作品にはかなわない。はさみを動かす姿や、どんなものを切ってみせるかに芸の本質があるんです」。最近多い注文の一つが「コロナ」だが、ウイルスの形ではなく、トヨタ自動車の往年の人気車種や、疫病退散の力があるという妖怪「アマビエ」などで返すのが当意即妙な紙切り芸の面白さだ。

 アニメ作品の「鬼滅の刃」や「プリキュア」などのオーダーも多く、シルエットが頭に入っているものは対応するというが「具体的なキャラクターなどよりは、芸人の裁量の幅が広い抽象的な注文の方が楽しいですよ」といたずらっぽく笑う。「例えば『挫折』という注文なら、芸人によって答えがバラバラになると思う。何ができるかわからない面白さも楽しんでほしいですね」


 「紙切りの世界」午後2時開演、全席指定、前売り1600円など。チケットは横浜にぎわい座☎045(231)2515。

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