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茅ケ崎市美術館、8月30日まで
神奈川文化賞受賞した洋画家、國領經郎の回顧展

カルチャー | 神奈川新聞 | 2020年7月20日(月) 19:59

砂の風景をテーマにした作品が並ぶ会場=茅ケ崎市美術館
砂の風景をテーマにした作品が並ぶ会場=茅ケ崎市美術館

 横浜市出身で日展を中心に第一線で活躍し、1983年に神奈川文化賞を受賞した洋画家、國領經郎(こくりょうつねろう)(19~99年)の生誕100周年を記念した回顧展「國領經郎展 静寂なる砂の景」が、茅ケ崎市美術館(同市東海岸北)で開催中だ。初期から晩年までの代表作やスケッチなど115点が並び、画風の変化やテーマとした砂丘の風景に託された心情を味わうことができる。

 國領は横浜市南区井土ケ谷生まれ。県立横浜一中(現県立希望ケ丘高校)在学中に相次いで父母を亡くした。東京美術学校(現東京芸大)図画師範科で学んだが、太平洋戦争のため繰り上げ卒業。新潟県柏崎市の中学へ教諭として赴任した3カ月後、召集されて中国へ渡った。

 46年の復員後は、教職の傍ら創作に励んだ。59年に横浜市港北区にアトリエを構え、68年から横浜国大で後進の育成に当たった。

 70年代以降に取り組んだ砂を主題にした風景画で知られるが、画業の初期には人物画や点描画を手掛けた。國領の点描画は、新印象派主義のスーラやシニャックが追求した色彩表現の効果を狙う点描とは異なる目的で描かれたという。

 同館の月本寿彦学芸員は「点を立体物として扱っている。色彩というより造形での工夫」と説く。「外人墓地」では盛り上がった絵の具が層をなす。描くモチーフを墓石や十字架に限定して抽象的に扱い、ダイナミックな画面を構成した。


「外人墓地」(1963年、横浜美術館蔵)
「外人墓地」(1963年、横浜美術館蔵)

 その点描も次第に薄く、小さくなり、やがてモチーフとして砂丘が描かれるようになる。國領は砂丘について「むきだしの自然」だと語っており、音のない真空の世界にショックを受けたという。風紋と車輪の跡が延々と続く「轍(わだち)」や砂上のボートに1羽のカラスが止まる「静止の空間」などに描かれる広大な砂丘の風景は、奇妙な静けさと孤独感に包まれている。

 97年に本紙で10回にわたって掲載されたコラム「週言」では、「私の作品に若(も)し孤愁の心象を見るとすれば、まず青春時代に形成された人間性に起因するところが大きいのではないかと思う」とつづった。

 教え子の一人で國領經郎顕彰会の片岡世喜(せいき)会長(68)は「先生は学生との交流を楽しまれていた。中国での戦争体験を口にされることはなかったが、現地で広々とした黄土色の砂地を目にしたことや、10代で両親を亡くされた孤独感が原体験となって表現されているのではないか」と話した。

 8月30日まで。10日を除く月曜と11日休館。一般800円、大学生600円。問い合わせは同館、電話0467(88)1177。

 
 

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