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性同一性障害の若者の半生が映画に

カルチャー | 神奈川新聞 | 2020年7月17日(金) 18:44

17歳の時に出場した弁論大会。700人を前に男性として生きることを宣言した((C)2019 Miyuki Tokoi)
17歳の時に出場した弁論大会。700人を前に男性として生きることを宣言した((C)2019 Miyuki Tokoi)

 女性の体を持つことに強い抵抗を抱きながら、自らの性の在り方と向き合い生きてきた一人の若者の半生が、映画になった。タイトルは「ぼくが性別『ゼロ』に戻るとき 空と木の実の9年間」(常井美幸監督)。性に揺れ惑う心情とその変遷を丹念に追ったドキュメンタリーだ。主人公とその母に、思いを聞いた。

 「カミングアウトすること。僕はそれが自分らしい生き方だと思ったんだ」。落ち着いた声色のナレーションが映像の始まりを告げる。声の主は小林空雅(たかまさ)(25)=川崎市多摩区。女性として生まれたが、その体への嫌悪感が拭えず、13歳で性同一性障害の診断を受けた。性別適合手術や戸籍の性別変更を経て、自身の性を見つめ直すさまが映画で描かれる。

 男性として生きることを宣言した高校時代の弁論大会、クラスメートとの他愛のない談笑、手術費用を稼ごうとアルバイトにいそしむ姿、待ち望んだ手術当日…。15歳からの9年間、ありのままの小林をカメラはとらえる。

 小中学生のころ、赤のランドセルやセーラー服など、女子の象徴とされるものを身に着けることも苦痛だった。「何でこんなに嫌なんだろう」。テレビドラマを通じて性同一性障害の存在を知り、「自分もそうかもしれない」とようやくふに落ちた。カウンセリングや診断によって苦しみの原因が明らかになったその時を「視界が開けた瞬間だった」と振り返る。

 男性として生まれ、78歳で性別適合手術を受けて戸籍上も女性となった90代の音楽家や、自身を「女性とも男性とも感じない」と語る若者との対話も映し出される。「どんな環境や状況に身を置いても、自分らしく生きることを抑制する必要はない」。さまざまなセクシュアリティーの人と出会い、小林は自己と向き合うことの大切さを再認識したという。


「誰もが自分らしく生きることを尊重し合う社会であってほしい」と話す小林空雅(左)と母の美由起
「誰もが自分らしく生きることを尊重し合う社会であってほしい」と話す小林空雅(左)と母の美由起

 わが子が性別違和に思い悩んだ10代のころから、一貫してその痛みに寄り添った母美由起(59)=茅ケ崎市=も映画に登場する。「子どもが腹痛を訴えたら、どうしたら楽になるか、どうすれば苦しさを取り除けるかを考えますよね。それと同じです」

 世間が思う「普通」に子どもが当てはまらないことをすぐには受け入れられない保護者もいるが、彼女の望みはただ一つ。子どもが自分を肯定して生きること。「何よりも、自分の気持ちに正直に生きてほしい。子が何を求めて、何をもって幸せと感じるかは、本人にしか分からないから」

 映画の終盤、苦難の先につかんだ小林のある言葉が、しなやかに響く。母の願いの通り、自らの意思で語る力を持つ小林は「手術も、戸籍の変更も、どんな時も自分自身で選択してきた」と話す。「性の問題に限らず、一人一人がもっとありのままの自分について考える時間が持てたら」。本作がそんなきっかけとなることに、深い期待を込めた。

 24日からアップリンク渋谷(東京都渋谷区)で上映。

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