【2018年12月9日紙面掲載】
11月18日、千葉市の「幕張メッセ」には無数の駒音が響いていた。小学生以下3160人が参加した「将棋日本シリーズ テーブルマークこども大会東京大会」である。私は初めて足を運んだ。
毎年恒例のこの大会には、教え子がたくさん出ている。ばったり会った友人の奥さまには「2時間かけて来るなんて偉いですね」と言われた。熱心な指導者だと思われたようだが、ちょっと違う。
もともと行くつもりはなかった。でもこの日の午後に高校サッカー千葉県予選決勝があり、スタジアムまでは30分ほどで、はしごするのにちょうどいいと気付いてしまったのである。将棋大会は予選しか見られないが「わざわざ来てくれた優しい先生」にもなれるし、好感度アップ大作戦だ。
高学年部門も低学年部門も、3連勝通過の予選を何人か突破したのはうれしかった。やや後ろ髪を引かれながら、私は予定通り会場を後にした。
市船橋と流通経大柏の好ゲームに見入っていると、教室関係者からメールが届いた。「内田君がベスト4進出です!」。
準決勝を勝てば、決勝は羽織はかまに着替えてステージで対局する。プロ棋士の解説も付き、一生の思い出になるだろう。千葉まで行ったのに教え子の晴れ舞台を見ないなんてありえない。
サッカーは終了間際に点が入り2対0。でも勝負事の怖さは分かっているので、流通経大柏の勝利を見届けて試合終了の笛と同時に走りだした。急げば間に合うかも。