
東京・上野の東京国立博物館では二つの展覧会を、隣り合う展示室で同時開催中だ。現代美術と鎌倉彫刻の仏像を楽しむことができる。
「マルセル・デュシャンと日本美術」展では、「現代美術の父」と称されるマルセル・デュシャン(1887~1968年)の代表作品や資料など約150点によって、創作の足跡をたどる。展示後半では、茶わんや絵巻といった日本美術との比較を試みている。
デュシャンは生涯にわたって「芸術とは何か」を問い続けた。大量生産された工業製品を使った「レディメイド」(既製品)と呼ばれる作品群を手掛けたのもその一環だ。男性用小便器に「泉」とタイトルを付けて発表した際は、物議を醸した。
展示されているデュシャン・コレクションを所蔵する米・フィラデルフィア美術館のマシュー・アフロン学芸員は「デュシャンの思考は困難で戸惑う」と認める。その上で、多様な素材と表現方法を追求し続け、「アートの地形がかなり広がる可能性があることを示した」と20世紀美術における存在の大きさを示した。

一方、「快慶・定慶(じょうけい)のみほとけ」展には、京都の大報恩寺に伝わる約30体の仏像と経文や絵画が並ぶ。仏像は運慶、快慶が率いた鎌倉時代の仏師集団「慶派」によるものだ。
同寺は千本釈迦(しゃか)堂の名前で親しまれており、1220年に創建された古刹(こさつ)。本尊は快慶の一番弟子、行快(ぎょうかい)による「釈迦如来(にょらい)坐像(ざぞう)」で、通常は年に数回だけ公開される秘仏だ。
会場には同像を囲むように、釈迦の弟子からえりすぐられた10人の僧をかたどった快慶の最晩年の作「十大弟子立像(りゅうぞう)」がそろって並ぶ。一人一人の特徴をつかんだ表情豊かな像で、各像を360度から見ることができる。
どちらも12月9日まで。月曜休館。「マルセル・デュシャンと日本美術」展は一般1200円ほか。「快慶・定慶のみほとけ」展は一般1400円ほか。両展セット券2千円。問い合わせはハローダイヤル03(5777)8600。