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紙の上に豊かな表情  現代銅版画の先駆者「駒井哲郎展」 横浜美術館

カルチャー | 神奈川新聞 | 2018年11月8日(木) 10:58

多色刷りの作品が並ぶ一角=横浜美術館
多色刷りの作品が並ぶ一角=横浜美術館

 日本における現代銅版画の先駆者、駒井哲郎(1920~76年)を多角的に捉え直す展覧会「駒井哲郎-煌(きら)めく紙上の宇宙」が、横浜市西区の横浜美術館で開催中だ。初期から晩年までの銅版画や詩画集など約210点と、関連する画家の作品約80点が並ぶ。文学者との交流や晩年に取り組んだ色彩豊かな作品に注目し、知られざる側面を紹介している。

 日本での銅版画の普及に尽くした西田武雄が創刊した雑誌「エッチング」を通じて、駒井は14歳で銅版画と出合った。西田が運営する日本エッチング研究所へ日曜ごとに通い、研さんを積んだ。

 同研究所には、レンブラントを含む小島烏水の銅版画コレクションが預けられており、西洋の巨匠作品を間近に見ていたという。

 東京美術学校(現東京芸大)を卒業後、1950年代初頭にさっそうとデビュー。洋画家の岡鹿之助や木版画家の恩地孝四郎らとも交流があり、大いに学んだ。関西を中心に活動した前衛芸術集団、実験工房にも参加。文学や音楽への関心の深さを示している。

 54年にはパリへ留学。横浜出身でパリ在住の銅版画家・長谷川潔から薫陶を受けた。パリの文化芸術の厚みに圧倒され、銅版画の伝統のない日本から来た自分の小ささを痛感し、落ち込んだ時期があったという。

 帰国後は、詩人や小説家と交流を深め、挿絵や装丁などの仕事で活躍。会場では、大岡信や谷川俊太郎ら11人の文芸家とのコラボレーションを紹介している。

 生前の展覧会や画集では多色刷り作品をあまり発表せず、白と黒が織り成す造形を追求し続けたが、晩年は多色刷りに取り組んだ。1点しか刷れない技法のため「版画による絵画」とも呼ばれるモノタイプによるもので、鮮やかな色合いを堪能できる。

 片多祐子学芸員は「たぐいまれな色彩感覚を持った作家。あくまでも版を介した制作に取り組んだ。銅版画のマチエール(素材や物質)にこだわり、紙の上に豊かな表情を生み出した」と話した。

横浜美術館


 12月16日まで。木曜休館。一般1500円、高校・大学生900円、中学生600円、65歳以上1400円。問い合わせは同館TEL045(221)0300。

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