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反戦の祈り「風」に乗せ 舞踏家・大野慶人が「緑のテーブル2017」出演

カルチャー | 神奈川新聞 | 2018年9月4日(火) 16:28

「緑のテーブル2017」の一場面から(NPO法人ダンスアーカイヴ構想提供)
「緑のテーブル2017」の一場面から(NPO法人ダンスアーカイヴ構想提供)

 「反戦バレエ」として知られる、ドイツの振付家クルト・ヨースの「緑のテーブル」(1932年)から想を得て創作された「緑のテーブル2017」(振付・岡登志子)に、舞踏家大野慶人(80)=横浜市保土ケ谷区=が出演する。「争いのない世界を希求する祈りの踊りでもあります」。そう語る自身の胸には、同じ舞踏家だった亡き父や自身の戦争の記憶が深く刻まれている。

 「僕は終戦を迎える7歳まで戦争を体験した。そのことはすごく大きな意味を持っています」。まっすぐな目で、丁寧に言葉を継ぐ大野。岡版「緑のテーブル」で、ヨースの原作にはない「風」という役を演じる。

 「ドイツが戦争に敗れた後に復活したその力が風かもしれない。あるいは形ではない『精神』。祈りを表現する存在でもあります」と、その役の意味するところを解釈する。

 テーブルを囲む男たちが激しい言い争いの末に殺し合いを始め、骸骨の「死の舞踏」が踊られる-。86年前に発表されたヨースの「緑のテーブル」はナチズム台頭への危機感から強いメッセージ性を伴い、「戦争に反対したダンス」と評された。今日まで世界中で再演され、大野の父で日本固有の舞台芸術として「舞踏」を確立した第一人者、故大野一雄にも大きな感動を与えたという。


稽古場で即興の踊りを披露する大野慶人=横浜市保土ケ谷区の「大野一雄舞踏研究所」
稽古場で即興の踊りを披露する大野慶人=横浜市保土ケ谷区の「大野一雄舞踏研究所」

 幼い頃の父との関わりについて、大野はこう回顧する。

 「父は僕が生まれた年から9年間戦地にいた。幼少期は写真でしか父を見なかった。周りに大人の男の人がいない。今思えば不思議なことで、ある意味さみしいものでもありました」

 一雄は出征により中国、ニューギニアで従軍し、仲間の死を目の当たりにした。戦場での体験を語ることはあまりなかったが「舞踏とは命を大切にすること」を信条に、表現を生涯続けたという。大野もまた、その精神を受け継いでいると話す。

 その意味でも、「緑のテーブル2017」への出演は意義深い。神戸を拠点に活動するダンスカンパニー「アンサンブル・ゾネ」主宰の岡が、原作の振付や音楽を使わず新たに生み出した本作には、政治家や死を象徴する「時間」、難民、娼婦(しょうふ)といった役が登場。昨年神戸で初演し、今年4月に名古屋で上演、9月には都内で再演する。

 「戦争は絶対にしてはいけない、と心から思っています」と大野は繰り返す。世の中に不満がまん延し「今、あの時代に雰囲気が似てきた」と危惧する。

 80歳の節目に舞台から退こうと考えてきたことから、今回が最後の出演となる可能性もある。「争いがなく、誰もが幸せになってほしい」。特別な舞台で、深い祈りを「風」に乗せる。

◆「緑のテーブル2017」は9月5、6の両日、午後8時開演。会場は東京都港区のゲーテ・インスティトゥート東京。チケット料金などの問い合わせは、主催のNPO法人ダンスアーカイヴ構想☎03(3450)6507。

おおの・よしと 1938年、舞踏家大野一雄の次男として東京・目黒に生まれる。59年、土方巽の「禁色」に少年役で出演。60年代に多くの土方作品に参加。69年の自身の独舞公演を機に舞台活動を退く。85年、大野一雄「死海」への共演で復帰。世界各地で公演、ワークショップを行う。横浜市保土ケ谷区に稽古場を構える「大野一雄舞踏研究所」所長。

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