
藤沢市出身。子どものころ両親がお弁当を作って、よく連れて行ってくれたという大船フラワーセンターを題名にした作品もある。そんな生まれ育った神奈川での受賞を喜ぶ。
「このような栄誉ある賞を頂けて本当にうれしい。今年になって、ようやく自分のやってきた仕事が何なのか、おぼろげながら見えてきたかなあ、というタイミングでした」
日用品と機械とを組み合わせた大掛かりなインスタレーションを発表してきた。日常や歴史、風習、偶然の出来事といった多様な事物から作品の発想を得るという。昨年、横浜市内で開催された「日産アートアワード」でグランプリを受賞した作品は、東京の地下鉄で駅員が修繕している水漏れの様子がヒントになった。
「展覧会会場で自分で水漏れを起こした上で、それを自分で修繕したら立体作品になるだろう」と、じょうろやゴム手袋など身近にある物を組み合わせ、水漏れした水を循環させる装置を生み出した。
「無用なものを自分に課し、処したという意味では時間の無駄であり、ばかばかしい暇つぶしと見えるかもしれない」と自ら指摘する一方、こうした「無為な営み」こそが大切だと感じている。
現代美術というと、時代が抱える社会問題に鋭く切り込みを入れるものという見方がある。だが、社会との「役に立たない」接点を提示することが、むしろ必要ではないかと問う。「現代美術は、曖昧なおりのような感覚未満のものを残すための営みかもしれない」
不確定なものをできるだけそのままの状態で捉え、鑑賞者にも感じ取ってもらうことを目指す。「必ずしも現代社会を象徴するものや、固有名詞を伴う具体的な事象と直接結びつくわけではないかもしれません。それでも現代、そして願わくば未来の社会で生きる私たちにとって、必要な何かなのだと思いたいです」
東京都在住、35歳。
=おわり