5月に92歳で亡くなった絵本作家・かこさとしさんの企画展「かこさとしのひみつ展-だるまちゃんとさがしにいこう-」が7日、川崎市中原区の市市民ミュージアムで始まった。時代を超えて愛され続けるユーモラスな作品に、子どもから大人まで多くのファンが見入っていた。
「だるまちゃんとてんぐちゃん」などで知られるかこさんは、1959年のデビューから亡くなるまで半世紀以上、多くの作品を発表。企画展は下絵やスケッチ、複製原画を中心に約200点を紹介し、「かこ作品」の展示会としては過去最大規模となる。
〈川崎の子ども達が、野性的で多くを語らず、行動で示す感性と意欲的な生きる姿勢に、私は多くの事を学びとる事が出来、昭和二十年以後の生きる望みを与えられた〉
自著で記すように、かこさんの創作の原点は50年代の川崎市幸区古市場でのセツルメント(住民生活向上のための社会運動)にある。東大工学部卒業後、民間企業の研究所に勤務しながら労働者の子どもたちに創作を指導。自ら紙芝居などを制作し、読み聞かせてきた。
企画展では古市場でのセツルメントを写真パネルで紹介。かこさんが大事に保存していた子どもたちの絵や、子どもたちと描いたスケッチも展示している。理系のかこさんが多く手掛けた科学絵本も紹介。断面図などを駆使し、物事を分かりやすく図解する作風に触れている。
幼稚園の頃からかこ作品が好きだったという横浜市港北区の井上晶子さん(51)は「だるまちゃんなどのキャラクターがいい。表現が具体的で、小さな子にも分かりやすい」と作品世界を堪能。会場近くのしらゆり中原保育園の園児たちも来場し、「食べ物を食べている絵が楽しかった」などと喜んでいた。
作家になるのが将来の夢という中学1年の宮内由芽さん(12)は、川崎区に住む祖母の山口千寿子さん(68)と訪れた。「かわいいから、『おたまじゃくしの101ちゃん』が大好き」と話し、作品をじっくり味わっていた。企画展は9月9日まで。