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横浜市民ギャラリーあざみ野
日常から社会を問う 悪い予感のかけらもないさ展

カルチャー | 神奈川新聞 | 2016年10月18日(火) 15:08

住宅の広告をモチーフにした風間サチコの「存在の同じ家♯1~♯15」が並ぶ一角。憧れのマイホームというステレオタイプな夢を皮肉る =いずれも横浜市民ギャラリーあざみ野
住宅の広告をモチーフにした風間サチコの「存在の同じ家♯1~♯15」が並ぶ一角。憧れのマイホームというステレオタイプな夢を皮肉る =いずれも横浜市民ギャラリーあざみ野

 日常的な光景をアートを通して捉えることで、社会が抱える多様な問題を示す展覧会「悪い予感のかけらもないさ展」が、横浜市民ギャラリーあざみ野(同市青葉区)で開催中だ。5人のアーティストによる作品約70点が並び、物事を見るさまざまな角度や視点の在り方に気付かされる。

 あざみ野コンテンポラリーとして現代美術を紹介する企画展の7回目。タイトルは、忌野清志郎が作詞したラブソングからつけられた。いつこぼれ落ちるか分からない喜びや幸せをかみしめようとする感覚を、肯定文ではなく反語で捉えている点に着目した。

 同ギャラリーの日比谷安希子学芸員は「社会の枠から外れることは悪いことなのかを問おうとアーティストの視点を利用した。こうあるべきではなく、その外に広がる世界にこそ豊かな場があるのではないか」と企画意図を話す。

 黒白の木版画に取り組む風間サチコの「登/下」は学校を暴力装置とみなしたシリーズの一つ。校内のげた箱を背景に、制服姿の女子生徒がうつむきながら歩く姿を描く。学校が好きではなく、あまり行かなかったという自身の体験を元に、登下校時のつらい心身の状態を表している。

 岡田裕子(ひろこ)の「カラダアヤトリ」は体全体を使って大人や子どもがあやとりをする様子をビデオに収めた。横浜市で岡田が制作拠点にしている中区黄金町や千葉の海岸、インドネシアや韓国などで撮影した映像を紹介している。

 白い綱を引っぱったり絡めたりする人々は、体を使う単純な遊びを純粋に楽しんでいる。日常ではそれぞれがいろいろなことを抱えているだろうが…と見る者に想像させる。

 現代の遊びやゲームは戦って相手より優位に立とうとするものが多いことに気付き、危うさを感じたことが制作のきっかけだという。

 「分からない」という感覚を身近な人物を捉えた写真で発信するのは、金川晋吾の「Kanagawa Shizue」シリーズ。20年ぶりに再会したおばを被写体に、2010年から撮り始めたもので初公開。それまで行方不明だったというおばは、認知症もありどこで誰と生活していたのかよく分からないという。

 金川は失踪を繰り返す父親を撮った写真集「father」を今年2月に刊行した。父もおばも親族だからというより、目の前の人物は何者か、自分は何者かを写真に撮ることで探っている。

 他のアーティストは、福島とドイツで撮影した映像を重層的に見せる鈴木光、鉛筆画約30点で身近にありそうでないものを提示する関川航平。

 30日まで。24日休館。入場無料。22日午前10時半~午後4時半、風間サチコを講師にワークショップ「木版画で実現?ドリームハウス」を行う。対象は小学5年生以上。参加費500円。申し込みはホームページで。問い合わせは同ギャラリー電話045(910)5656。


岡田裕子の「カラダアヤトリ」ではビデオ映像とインスタレーションを展示
岡田裕子の「カラダアヤトリ」ではビデオ映像とインスタレーションを展示
 
 

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