大正後期から戦後にかけて鎌倉を拠点に活動した洋画家・金沢重治(じゅうじ)(1887~1960年)の作品を特集した所蔵品展が横須賀美術館(横須賀市鴨居)で開かれている。2年前の来館者による人気投票で1位に輝いた鎌倉の寺を題材にした油彩画など18点が並ぶ。7月8日まで。
金沢は都内で生まれ、19年に妻の肺病の療養のため鎌倉に移住。自宅周辺の自然を主なテーマにして、緑豊かな風景画を数多く描いた。制作の傍ら、画家を志す三浦半島の若者を指導してきた。
今回の特集コーナーは、同美術館の開館10周年を記念した来館者投票で、妙法寺(鎌倉市大町)の仁王門を描いたとされる「夏の山門」が1位になったことから、他の作品も知ってもらおうと企画された。
投票では、所蔵作品約5千点から学芸員らが選んだ68作品を対象に計5600票以上が寄せられた。夏の山門の知名度は決して高くないものの、最多の535票を獲得した。境内に生い茂る木々が美しい作品で、同美術館の学芸員は「素直な自然の描写に支持が集まったのではないか」と分析する。
特集コーナーには、鎌倉市内の寺や自然を描いた風景画のほか、人物画も展示。終戦の年である「昭和二十年八月」の日付が刻まれた自画像もあり、なぜその時に自身を描いたのか、戦中を生きた画家の胸中を考えさせられる。
同美術館の学芸員は、「鎌倉周辺の地域以外ではあまり知られていない画家なので、作品をまとめて見られるのは珍しい機会。人気投票で投票した人や、鎌倉の風景をよく知っている人に楽しんでもらえれば」と話している。
観覧料は一般310円。問い合わせは、同美術館電話046(845)1211。