本紙の長寿連載「かながわ定食紀行」でおなじみの定食評論家が、東京の山手線を回りながら一駅ごとに食べ歩き、同連載で紹介した神奈川の名店を再訪し、時に全国を行脚…。どこから読んでも楽しめる。
横浜市営地下鉄の蒔田駅近くの洋食店や、レバカツで知られる伊勢佐木町の老舗のくだりでは、料理だけでなく横浜下町の風情にも言及。鶴見川沿いの「秘境系定食屋」を目指し20~30分も歩く一節からも、街歩き好きの一面が伝わる。
てんや、ゆで太郎、松屋、ミスタードーナツといったチェーン店も平等に愛する。「甘辛のそぼろがたっぷりのり、そこに温玉が参加するわけだから、これはもうめちゃくちゃおいしい」といった具合だ。ホテルチェーンのドーミーインが無料サービスする「夜鳴きそば」まで取り上げているのに驚かされる。
著者の作品で駅弁は珍しいが、愛知・豊橋駅の「壺屋」のいなりずしは実においしそうだ。リュックに入れていたら汁がこぼれた、という逸話もステキ!
(竹書房03・3264・1576、864円)