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膝を交え創作語る 文芸コンクール講評会

カルチャー | 神奈川新聞 | 2019年11月28日(木) 14:43

 神奈川新聞社が主催する第49回文芸コンクールの授賞式と講評会が16日、横浜市中区のニュースパーク(日本新聞博物館)で開かれた。審査員と参加者が膝を交える講評会の「近さ」が、本コンクールの特長だ。審査を務めた作家の角田光代、詩人の金井雄二の解説にも熱が入った。

 「風の中で生きる」で2年前に続き最優秀賞となった村中江利(こうり)は、本作が2年前の続編だと告白。角田は「まさか続編とは…」と完成度の高さをたたえた。佳作「鶴見線」を巡っては、作者の飯塚ひろみが「昨年JR鶴見線に乗り、面白い電車だと感じて書いた」と説明。角田は「華やかな世界ではないが、最後に生きる強さが感じられる」と、作者の視点を評価した。


講評会で受賞者の質問に熱心に答えた角田光代さん=横浜市中区のニュースパーク(吉田 太一写す)
講評会で受賞者の質問に熱心に答えた角田光代さん=横浜市中区のニュースパーク(吉田 太一写す)

 角田が「えっ」と声を上げたのは「虹のワルツ」。作者の赤澤俊之が「風呂に漬かってスマホで書いた。いろいろな思いが浮かぶので…」と説明すると、町屋良平の芥川賞受賞作「1R1分34秒」を挙げ「町屋さんも入浴中にスマホで書いたと話していた」と、意外な共通点に驚いていた。

 島田雅彦、三浦しをんら歴代審査員に選ばれ、7度目の入賞となった高橋美惠は、特に敬愛するという角田に「悪意ある人物を主人公にするには」など幾度も質問。角田は「自分が考えつくよりも嫌な気持ちを想像すること」と、どの質問にも真剣に答えていた。


講評会で受賞者の質問に熱心に答えた金井雄二さん=横浜市中区のニュースパーク(吉田 太一写す)
講評会で受賞者の質問に熱心に答えた金井雄二さん=横浜市中区のニュースパーク(吉田 太一写す)

 現代詩は2年連続で最優秀の該当作がなかった。金井は「物事を深く考えているか」「真摯(しんし)に言葉と向き合っているか」など五つの選考基準を列挙。佳作の7編は「自信を持っていいと言える」と述べた。

 金井は大和田宏樹の「ペットボトル」で、ボトルを「彼」と捉え「彼は僕の手を掴(つか)む」とした第2連を挙げ「詩ならではの表現だ」とたたえた。国広知恵子の「記憶と水、心」についても「透明な水が静かに/心の窪(くぼ)みに溜(た)まっている」の2行を「書けそうで書けない」と評価。一方で「もう少しリアルさを追求してほしい」と注文も付けた。

 現代詩の解釈は時に難しさを伴う。金井は「詩はある場面を切り取るもので、多くを語らずイメージするものだ」「本当かどうかでなく、詩としての『真実』が重要」と説いた。ベテランには「もっと素直に書いていい」、若手には「欠点は気にせず、どんどん書けばいい」と背中を押した。

 
 

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