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服部宏のシネマパラダイス
世界を感動させた実話の裏側 「ハドソン川の奇跡」

カルチャー | 神奈川新聞 | 2016年9月29日(木) 09:42

(C)2016 Warner Bros.All Rights Reserved
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 2009年1月15日。極寒のニューヨーク上空850メートルを飛行中のエアバスに巨大な鳥の群れが衝突、エンジンが火を噴いて停止した。70トンの機体が高速で墜落する。

 機長サリー(トム・ハンクス)=写真奥=は管制官の指示に従わず、ハドソン川に着水。乗員・乗客計155人は全員、無事だった。サリーは一躍ヒーローとたたえられるが、やがて“容疑者”になる。

 クリント・イーストウッド監督「ハドソン川の奇跡」は、世界を感動させた実話の裏側に迫る。

 見せ場は二つ。まず、事故発生から不時着までのわずか3分28秒に、サリーは42年間のパイロット経験で得た全知全能を傾ける。コックピットの臨場感は息苦しいほど。

 もう一つは、サリーと副操縦士ジェフ(アーロン・エッカート)=同手前=が国家運輸安全委員会に喚問される後半。サリーは「ほかの選択肢はなかったか」と厳しく追及され、英雄は再び窮地に立つ。

 乗客側のドラマなど枝葉をそぎ、全体を1時間36分に凝縮したトッド・コマーニキの脚本が秀逸。冒頭から観客の度肝を抜くが、こけおどしではなく、9・11のトラウマという生々しい心理描写になっている。

 イーストウッドの前作「アメリカン・スナイパー」は、実在の狙撃手の英雄視に疑問を感じた。今回はサリーのほかに、救出作戦に携わった多くのニューヨーク市民の献身と団結にも描写の力点を置く。

 9・11、イラク戦争、金融危機を体験したアメリカが誇りを取り戻す契機を“無名の市民”がつくった。終幕、ジェフのジョークが委員たちを笑わせる。祖国に対するイーストウッドの信頼が、実話を得てラストの余裕を生んだか。

 横浜ムービル、TOHOシネマズ川崎ほかで上映中。

 
 

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