13日から横浜ブルク13などで上映。
「人間失格」や「斜陽」といった傑作を世に送り出した人気作家、太宰治の晩年を、深く関わった3人の女性を通して赤裸々に描く。
太宰は妻子がいる身で厚かましく女を口説く色気や、文学に懸ける底知れぬ情熱と才能の持ち主だ。そんなスター性とずぶとさを、小栗旬=写真右=が巧みに体現した。
何人もの女性と心中騒動を繰り返した太宰だが、実際にこんな感じで女に言い寄ったのなら、まあモテただろうなと思わせる。
心中も文学のためだと放言し、悪びれない太宰に対し、タイプの違う女の強さを見せつけたのが女性たちだ。夫の才能を信じて全てをのみ込む妻・美知子(宮沢りえ=同左上)、清らかな情熱とでも呼ぶ魅力を発揮した作家志望の愛人・太田静子(沢尻エリカ=同左中央)、すさまじい独占欲で太宰の最後の女となった山崎富栄(二階堂ふみ=同左下)。太宰の都合に振り回されるというより、自らの手で人生を選び取る描写がなされ、興味深い。
印象的なシーンを過剰なまでの花で演出するのは、蜷川実花監督ならではの映像美。大喀血(かっけつ)して死の瀬戸際に立つ太宰に白い花が降り積もる場面は、この上なく美しい。
坂口安吾を藤原竜也、若き三島由紀夫を高良健吾といった顔ぶれも楽しみの一つ。画面の色彩も、登場する俳優もとにかく豪華だ。
監督/蜷川実花
製作/日本、2時間