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マエストロの音楽手帳
下ごしらえにせいを出す

カルチャー | 神奈川新聞 | 2019年8月23日(金) 19:52

魯肉飯(ルーローハン)もどき
魯肉飯(ルーローハン)もどき

【2019年8月18日紙面掲載】
※川瀬賢太郎、神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者

 僕の趣味の一つに料理がある。東京にいる時はたまの休日だけでなく、リハーサルやコンサートで忙しい日でも料理をする事が多い。時には音楽の事を忘れて無心になりながら。また時にはリハーサルでの反省や翌日のプランを考えながら。

 とは言っても得意料理は何か? と聞かれても特にあるわけではない。玉ねぎを細かく切ってひたすらアメ色になるまで炒めたり、鶏肉や野菜をひたすら姿形がなくなるまで弱火で煮込んだり。いつも何を作るかはその後考えるというありさまである。いわゆる下ごしらえマニアなのかもしれない。料理を作る時の楽しさの一つは素材が持っている個性と向き合い、その個性を生かしつつ、他の食材との融合を考え、実践することだ。だからよほど取り返しがつかなくなるまではクックパッドなど既存のレシピを見ないようにしている。そして、ひたすらに「あーでもない、こーでもない」と言いながら味見を繰り返し、出来上がったころにはおなかがいっぱいになっている。

 料理を作るという作業はオーケストラのリハーサル(下ごしらえ)に似ているかもしれない。目の前にいるプレーヤーの個性を尊重しつつ、最終的には音をブレンドしていかなくてはならない。そこには既存の方法や、こうすれば絶対うまくいく、というメソッド的なものはない。目の前にある個性と、とことん向き合わなくてはならないのだ。そして、ここでも「あーでもない、こーでもない」と言い合いながら一つのコンサートを作りあげていく。どちらにも共通している事は最終的に食べたり、聴いたりしてくれる人が待っているという事。「今日の料理、すごくおいしかったよ!」と妻に言われる事や、「今日の演奏会良かったです!」とお客さまに言われる事は、やはりこの上ない喜びなのだ。そんなうれしい体験があるからこそ、今日も川瀬は下ごしらえにせいを出すのであった。

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