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集団で意識する「個」 「二分間の冒険」舞台化

カルチャー | 神奈川新聞 | 2019年8月19日(月) 20:30

「瞬間的に楽しむだけでなく、悲しみや悩みなど、さまざまな感情に揺れる舞台にしたい」と話す山本卓卓=横浜市中区
「瞬間的に楽しむだけでなく、悲しみや悩みなど、さまざまな感情に揺れる舞台にしたい」と話す山本卓卓=横浜市中区

 出版から30年余のファンタジー小説「二分間の冒険」(岡田淳原作)が、KAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で舞台化される。子どもと大人が楽しめる作品を創るKAATキッズ・プログラムの一環。「現代を意識して台本を書いた」と明かす演出の山本卓卓(すぐる)(32)は、蔓延(まんえん)する全体主義に抵抗する意思を本作に乗せる。

 小学6年生の主人公悟が、黒猫の導きで学校から異世界へトリップする物語。支配者である竜のいけにえとして子どもが集められる理不尽な世界で、悟は仲間と共に戦いに挑む。

 山本は「集団の中で『個』を意識していく話だと読み取った」と、原作の印象を語る。「竜の館」に集う子どもたちは主体性を失い、ある種の全体主義的なムードに覆われているが、次第に自己を見つめていく、との解釈だ。

 「子どもがいけにえになる姿は神風特攻隊のように若者の犠牲の上に国益を追求した先の大戦にも置き換えられる」と山本。「個」をないがしろにする風潮は決して過去のものではなく、現代に地続きの問題だとの危機感を持っている。

 思い起こすのは、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で元従軍慰安婦を象徴した「平和の少女像」などを展示した「表現の不自由展・その後」が中止となった一件。同展への脅迫や公権力による圧力を念頭に、山本は「自分の不快なものを世にまき散らすな、という主張は個々の考えが違うことを受け入れられていないことの表れ。多くが全体主義を望み始めているような空気が怖い」。

 大いに迷い、失敗を繰り返す「冒険」の中に「さまざまな思いを込めた」と話す。「世の中は多様だということ。違いを排除するのではなく認めること。せりふの端々からそれを受け取ってもらえると思う」

 17~25日(19日休演)。対象は4歳以上。大人3500円、高校生以下千円。問い合わせはチケットかながわ☎(0570)015415。

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