神奈川フィルハーモニー管弦楽団は31日、横浜みなとみらいホール(横浜市西区)で「音楽とスポーツの幸せな関係」と題した特別演奏会を開催する。ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピック開催が近づく中、スポーツにちなんだ楽曲を披露することで期待感を高め、感動と深く結びついた音楽の魅力を再認識してもらう狙い。フィギュアスケーターに音楽を提供している作曲家の平沼有梨に、アスリートと音楽家の「幸せな関係」について聞いた。
2014年のソチオリンピックに出場したフィギュアスケーター・鈴木明子のショートプログラム「愛の讃歌」。「スケート人生を重ねて滑りたい」という鈴木の依頼を受け、平沼はオリジナルアレンジを手掛けた。「2分50秒の中で、スピンやジャンプなど演技の要素を入れ、音楽も盛り上がる場面で一番の見せ場が来るように構成した」と振り返る平沼は「アレンジをすべて任せてもらえてうれしかった」とほほ笑む。秒単位の細かい調整を重ねて完成した曲は、パワフルなステップを得意とし、表現力にたけた鈴木選手の持ち味を生かす珠玉のプログラムとなった。
自他共に認める「フィギュアスケートおたく」の平沼は「人に感動を与える演技は、音楽もよく練られた編集をされていることが多い」と指摘する。プロフィギュアスケーターの荒川静香には「Nella Fantasia」という曲にアレンジを施して提供しているが、「荒川さんは白鳥のように優雅で凜(りん)とした雰囲気が魅力。トリノオリンピックのフリープログラム『トゥーランドット』も彼女に合っていたし使い方も素晴らしかった」と分析。「音楽が選手の演技を助けている部分は大きい」と話す。日本フィギュアスケート界では、音楽家によるプログラム曲の制作はまだ少ないというが、「その選手が持っている雰囲気やエネルギーを音楽に反映させることができる。依頼があれば積極的に手掛けていきたい」と力を込める。
演奏会当日は平沼が「愛の讃歌」を含む2曲をピアノで演奏するほか、ハチャトリアンの組曲「仮面舞踏会」の「ワルツ」、チャイコフスキーの「白鳥の湖」などフィギュアスケートで使用されたクラシック音楽を神奈川フィルが披露。作曲家の大沢みずほが制作した、アーティスティックスイミングの競技音楽なども演奏されるという。
また、平沼がこの演奏会のために作曲した新作も発表される。「歓喜の瞬間を目指して、どんな時も前向きに進んでいく強い姿を応援するような気持ちで書いた曲。大きなスポーツイベントも迫っているので、アスリートへの応援歌として聴いてもらえれば」
31日、横浜みなとみらいホール。午後2時半開演。S席5千円など。チケットは神奈川フィル・チケットサービス☎045(226)5107など。