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“今”を伝える 県立近代美術館葉山で二つの展覧会 

カルチャー | 神奈川新聞 | 2019年8月13日(火) 15:14

柚木沙弥郎の新作「鳥獣戯画」を展示する一角=県立近代美術館葉山
柚木沙弥郎の新作「鳥獣戯画」を展示する一角=県立近代美術館葉山

 県立近代美術館葉山(葉山町一色)では、今という時代を伝える二つの展覧会が開催中だ。今年10月に97歳を迎える染色家の柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)と、5人の現代アーティストによる斬新な表現。美術館という非日常の空間で、日々の暮らしという日常を思い起こさせる作品がそろう。

 染色にとどまらず、絵本や版画など幅広く活動中の柚木。「柚木沙弥郎の『鳥獣戯画』」展には、型染め布や絵本の原画、古典絵巻「鳥獣戯画」に取材した新作など約30点が並ぶ。

 同館の朝木由香学芸員は「戦争体験もあり、時代を見つめてきた一作家として捉えたい」として、柚木の「今」を伝えたいと話す。

 新作の「鳥獣戯画」は長さ12メートルに及ぶ絵巻。白い和紙に黒色の水彩絵の具で、カエルやウサギ、サルなどを生き生きと描いた。
 村山亜土の舞踊劇「鳥獣戯画」の脚本に着想を得たもので、柚木は絵巻を描くことが「自分の社会認識や造形思考の転機になるかもしれないと考えた」とつづっている。

 政変や戦乱、飢饉(ききん)などで庶民が苦しんだ平安末期は「今の世界の様相に似ていないこともない」と柚木。閉塞(へいそく)的な社会の潮流に流されず、生きる喜びや躍動する生命観を描き出している。

 「みえるもののむこう」展は、個展形式で5人のアーティストを紹介。同館の三本松倫代学芸員はアーティストについて「今の時代に身を置いて日々のニュースに接し、感じたことや経験を自分の作品に落とし込んでいる。一ひねり、二ひねりして落とし込んでいるのが、アーティストとしての優れた感性だ」と話す。


壁にはステップや動線を書き留めたメモを展示。「身体がその空間にどう置かれたら美しいかを考えるのが好き」と話す酒井幸菜
壁にはステップや動線を書き留めたメモを展示。「身体がその空間にどう置かれたら美しいかを考えるのが好き」と話す酒井幸菜

 2011年に神奈川文化賞未来賞を受賞した、振付家でダンサーの酒井幸菜(33)は、会場を訪れた鑑賞者の動きからモチーフを採集し、各作家の展示空間に合わせたパフォーマンスを作り上げて上演する。

 「ダンスは動線を作ることでもある。鑑賞者がどこから見始めて、どう動くかという動線を見ていると面白い。歩くスピードや立ち止まり方などにも注目して観察している」と酒井。

 週の何日かを会場で過ごして人々を観察。メモやスケッチを展示しており「振り付けを意味する“コレオグラフィー”のグラフィーは、“書き記す”という意味。グラフィカルに平面に書き記すことから、振り付けを起こすことをやってみようと思った」という。

 「歩く、座るといった日常のふとした瞬間が、きれいだな、面白いな、と気付ければ。その視点をシェアできればいいなと思う」

 24日と9月1日は午前11時と午後3時から約15分、9月8日は午後4時から約30分のパフォーマンスを行う。他の作家は一之瀬ちひろ、白石由子、津上みゆき、三嶽伊紗。



どちらも9月8日まで。8月12日を除く月曜休館。それぞれ、一般600円、20歳未満と学生450円、65歳以上300円、高校生100円。問い合わせは同館☎046(875)2800。

 
 

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