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戦争を描いた宮崎駿原作「最貧前線」が今夏、芝居に

カルチャー | 神奈川新聞 | 2019年8月10日(土) 12:17

「この舞台を通じて、語られてこなかった歴史の一部に触れてほしい」と話す井上桂=東京都
「この舞台を通じて、語られてこなかった歴史の一部に触れてほしい」と話す井上桂=東京都

 戦争を描いた宮崎駿原作の「最貧前線」がこの夏、芝居になる。宮崎のオリジナル作品の舞台化は国内初。8月末の横浜公演を皮切りに、1都6県の8会場で上演する。企画した水戸芸術館(水戸市)芸術監督の井上桂(54)は「宮崎さんが託した平和への思いを観客の皆さんに届けたい」と語る。

 原作は1990年に雑誌に掲載された5ページからなる短編漫画。太平洋戦争末期、機動部隊や爆撃機など米軍の動静を探ろうとした旧日本海軍に徴用された漁船を題材にしている。物資が不足する厳しい戦況の中、戦場の最前線に駆り出された漁師や海軍兵士の姿を描く。

 脚本を手掛けた井上によると、特設監視艇として太平洋上に配置された漁船の数は400隻。多くが米軍から攻撃を受け、終戦時に残ったのはわずか100隻だったという。3万人を超える乗組員が命を落としたとされるが、「目撃者がいない状況で、その詳細は判明していないものが多い。あまりにもこの悲劇は知られていない」として舞台化を目指した。

 およそ30年前に原作に出合った井上は「宮崎さんらしいユーモアとスペクタクルを併せ持った作品で、初めは紙芝居を楽しむ感覚で読み進めた」と振り返る。しかし「平和が何よりだノオ…」と描かれた最後のコマを目にして「ずしんときた」。そこに込められた平和へのメッセージが胸に重く響いた。

 5年後、ラジオドラマとして放送された作品を聴き、漁師が徴用された日や家族の心情に想像を膨らませながら原作にはない「前後」のストーリーを自ら書き上げた。

 シナリオは日の目を見ることなく月日が過ぎたが、2017年、井上が同館の芸術監督に就任した頃、ドラマなどの演出を手掛ける一色隆司に一読してもらい「芝居にできる」との反応を得た。

 昨春、企画書を宮崎に送ると、10日ほどで舞台化の許可を得たという。市民が戦争に巻き込まれる事実に迫った本作は、「戦うことだけが平和を維持する手段かのような論調を耳にする昨今こそ、演劇にする意義がある」と井上は言う。

 舞台の演出を務めるのは一色。たくましくて豪快な役どころの主演の船長役には俳優の内野聖陽を起用した。このほか、風間俊介や溝端淳平が主要キャストの軍人を演じる。

 断片的な資料や港町への取材結果をつなぎ合わせて仕上げた台本には、同じ船に乗り込む漁師と海軍兵士の対立や信頼といった人間ドラマも描かれている。宮崎が原作に込めた平和への思いを反すうする井上は「14歳の少年から60代までの登場人物の一人の気持ちになって、わが事としてあの時代を追体験してほしい」と話している。


舞台作品としてよみがえる宮崎駿原作「最貧前線」のタイトル画(c)Studio Ghibli
舞台作品としてよみがえる宮崎駿原作「最貧前線」のタイトル画(c)Studio Ghibli

横浜公演 27~29日

 県立青少年センター紅葉坂ホール(同市西区)。料金は8千円。問い合わせはtvkチケットカウンター☎045(663)9999。10月26、27の両日には大和市文化創造拠点シリウスでも上演する。問い合わせはやまと芸術文化ホールチケットデスク☎046(263)3806。

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