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雪月花3部作一堂に 喜多川歌麿

カルチャー | 神奈川新聞 | 2017年8月29日(火) 16:35

歌麿の「雪月花」3部作が並ぶ会場
歌麿の「雪月花」3部作が並ぶ会場

 箱根町の岡田美術館では喜多川歌麿の巨大な肉筆画3部作が並ぶ「深川の雪と吉原の花」展を開催中だ。江戸の三大遊里を描いた華やかな作品で、それぞれの違いや共通点を見ることができる。

 江戸時代、水運で江戸へ商品を届ける商業都市として発展した栃木。「雪月花」3部作は、歌麿と交流があった豪商の善野(ぜんの)家が注文し、栃木で描かれたと考えられている。

 今回は、同館所蔵の「深川の雪」(以下「雪」)と米・ワズワース・アセーニアム美術館が所蔵する「吉原の花」(同「花」)が並び、米・フリーア美術館が所蔵し、館外への持ち出しが禁止されている「品川の月」(同「月」)の原寸大複製画によって3作をそろって展示した。1879年の栃木・定願寺での展示以来、138年ぶりの「再会」となった。

 「月」は1788年ごろ、3~4年後に「花」、1802~06年に「雪」が描かれた。岡田美術館の小林忠館長は「隔たりがあるのは、長崎から取り寄せる中国製の最上級の紙や絵の具などをまかなう資金をためる時間が必要だったからだろう」と推察する。

 「花」が描かれたのは寛政の改革の最中で、江戸の文化人が萎縮していた頃。歌麿も栃木に身を潜めたとみられる。ただし反骨精神は旺盛で、遊郭である吉原の座敷で派手に遊んでいるのは武家の奥方。女性の姿に託し、庶民を締め付ける一方でぜいたくをする幕府の高官らを風刺している。

 そんな歌麿の最後は、牢(ろう)に入れられ、間もなく亡くなったとされる。入牢前には50日間の手鎖の刑を受けており、時期的に「『雪』を描く直前に当たる」と小林館長。受刑後に栃木で「雪」を描き、江戸に戻ってから幕府ににらまれることを何かしたことで捕らえられて牢に入り、亡くなったのではないかという。

 3作を順に見ていくと、建物の構造や人物配置が複雑になっていく様子が分かる。描かれた人物は合計で99人に上る。小林館長は「『雪』は最晩年の歌麿が花開き、炎となったものではないか」と高く評価している。

岡田美術館「深川の雪と吉原の花」展(箱根町)
 *10月29日まで
 *一般・大学生 2800円
 *約450点の常設展示が見られる
 *小・中・高校生 1800円
 *問い合わせは同館電話0460(87)3931

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