いたずら好きで好奇心旺盛、興味があればどこへでも向かう。そんな子どもたちの想像力を育もうと都内で開かれている料理教室が盛況だ。主宰する「リトルシェフクッキング」(東京)代表の武田昌美さん(32)は「料理を通じて子どもたちの秘めた力を伸ばしたい」と話す。
2017年6月に始まった教室は2~6歳が対象。小田急線千歳船橋駅(東京都世田谷区)近くにある約50平方メートルの一室で、毎週土・日曜に開かれている。10人前後の定員がすぐに埋まる回も多く、名古屋など遠方から参加する親子も。「ニーズの高さを実感しています」と武田さんはほほ笑む。
フランスで料理の修行をしていた父の影響を受けて幼少期から料理に親しみ、食育アドバイザーや幼児食インストラクターなどの資格を持つ武田さん。ピザ、コロッケ、手打ちパスタ、ティラミスなど、栄養士のスタッフ波多幸恵さん(32)と共に40種類超のレシピを手掛けてきた。「ポイントは子どもにとって作りやすいかどうか。実験を繰り返して完成させた、ノウハウの詰まったレシピです」
ただ、料理そのものを教えたいわけではない。「料理をきっかけに、家族も知らなかった子どもたちの才能を見つけてほしいんです」
付き添いの保護者が手を貸さないのがルール。2歳の子が卵を割るのに成功したり、ケーキにどんなトッピングをのせるか考えたり、子どもたちの主体性を大切にした空間となっている。
「失敗を恐れないことも学んでほしい」と言う。例えばチーズケーキを作っていた時に卵を半分以上こぼした子がいたが、卵の代わりに牛乳を足すことでその子だけの「特製プリン」が完成した。「失敗も捉え方次第でその先どう転ぶか分からない。失敗も生かせることを子どもたちに肌で感じてほしいんです」
周りと比較するのではなく、その子の自由な発想や創造を認める。「自分でできた」という達成感が自信につながる。「料理こそ、子どもたちがこうした経験から自己肯定を体感できるツール」。これまでに1500人以上の子たちに教えた体験からこう実感する。
5歳と2歳の2児の母でもある武田さんは、商社の営業や客室乗務員としての勤務を経て、二人目を出産後にリトルシェフクッキングを起業。料理教室のほか、横浜市内の保育園での食育教室や企業のレシピ監修など手広く活動している。
2歳から挑戦する意欲が高まることや、卵を握ったり割ったりする行為に楽しみを見いだすこと、何度も繰り返すうちに成功することなど、自身の子育てを通じた発見の数々が起業を後押ししたという。
見据えるのは「幼児教育に一石を投じること」と力強く語る。「みんな一緒の『お利口さん』を育てるのではなく、子どもたちが未就学児の間に培ったファンタジーの世界を料理を通じて伸ばしていきたい」
童話に登場するスープの味を想像して実際に作ったり、桃太郎でおなじみのきび団子作りに挑戦したり、料理教室には子どもの感性を刺激するためのアイデアが詰まっている。その裏には、子どもたちに負けない主宰者の深い探究心があった。
参加費は3240円から。レッスン日など料理教室の詳細はリトルシェフクッキングのホームページから。