
横浜市神奈川区を拠点に活動を続ける老舗アマチュア劇団葡萄(ぶどう)座が15、16の両日、スペース・オルタ(同市港北区)で舞台「見上げる魚と目が合うか?」(作・原田ゆう)を上演する。入団しておよそ10年になる中堅俳優の二人芝居。演出する劇団の座長・山本伸二(62)は「二人の会話の『妙』を楽しんでほしい」と話す。
あるデザイン事務所へ面接に訪れた梨絵と妙子。担当者が急用でいなくなり、部屋に残される。初対面の二人は互いを探りながら、徐々にリアルな本音を交わしていく。相手を通して「己の存在を改めて自分で認識する」会話劇だ。
仕事にプライベートにがむしゃらに生きる20代から一度立ち止まる30代。そこで漠然と感じる現状や将来への不安と迷い。そんな心情にリアルに迫る本作は、役者の絶妙なせりふ回しで観客をぐっと引き込む。
「現代的で、共感できるせりふに富んでいるのがこの作品の面白さ。感想は見た人の感覚に委ねられます」と、梨絵を演じる伊藤瑞貴(26)。人付き合いがうまい一方で自分を殺して取り繕う一面もある役どころに「現代の若者特有の悩みを出せたら」と意気込む。
自分に正直で人付き合いが苦手。性格が梨絵と正反対の妙子役に臨む清水万里亜(27)も「SNSとの関係など、やはり共感できる描写が多い。同年代の人にもぜひ見てほしい」と呼び掛ける。

1946年創立の葡萄座は現在、20~70代の11人が毎週の稽古に励んでいる。「長い時間をかけて信頼し合う仲間と一つのものを創る。この過程を体験できるのが醍醐味(だいごみ)」と、山本はアマ劇団の魅力を語る。子ども向けから古典まで多様なジャンルに取り組むのが葡萄座の特徴。現在、共に作品を創る新たな劇団員を募集中だ。
高校生の頃に葡萄座に入団した伊藤は「アットホームな劇団の雰囲気だけでなく、演出面でたくさん勉強できるのがここの魅力。70年以上の歴史の一員になれることがうれしい」と充実した表情を見せた。
168回目の公演となる「見上げる魚-」は、上演中の音響や照明はほぼ変わらず、俳優の演技が一層重要となる舞台だ。夜間の稽古中、二人の芝居をじっと見守っていた山本は「彼女たちの実力を存分に発揮してもらう。役者として脂の乗った二人。自信を持って薦められます」と力強く語った。
15日午後2時、同6時半、16日同2時開演。前売り1500円、当日2千円、高校生以下千円(予約のみ)。予約・問い合わせは劇団のメールアドレス(budoza1946@gmail.com)まで。