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現代美術家が新たな光 横浜美術館が開館30周年記念展

カルチャー | 神奈川新聞 | 2019年4月26日(金) 17:47

 横浜美術館(横浜市西区)の開館30周年を記念し、約400点の所蔵品が並ぶ「Meet the Collection-アートと人と、美術館」展が開催中だ。全展示室を使った見応えのある展示で、同館の代表作を紹介すると同時に、ゲストアーティストが展示に関わることで所蔵品に新しい光を当てている。

 全体は、美術における生命や人の営みの表現に着目した「LIFE:生命のいとなみ」と、アートを芸術家による世界の縮図と捉えた「WORLD:世界のかたち」の2部構成。

 ゲストとして参加した現代美術家4人は、それぞれのテーマに沿って、所蔵品の中から展示する作品を選び、所蔵されていない自作と共に展示している。

 1960年代末に「もの派」を代表する作家として活動し、現在も第一線で活躍する菅(すが)木志雄(きしお)(75)。「モノからはじめる」をテーマに、物そのものに注目した展示空間を手掛けた。

 菅は物への認識に疑問を持つことで、自分の感覚を大事にするよう訴える。


展示準備中の菅木志雄さん
展示準備中の菅木志雄さん

 「これは木だ、石だ、と思う。それは頭に中にある記号性と結び付いているから。その結び付きを取り払い、本当にこれは木なのかと思いながら見ていい。そうすると、それぞれが感じること以外にない。僕はそのきっかけづくりを作品によって行っている」

 20年前に同館で個展を行った菅は「横浜美術館は、ベースキャンプのような存在。閉鎖性のない空間が好きだ。他の美術館とは全く違う」とほほ笑み、当時と同じ場所で同じインスタレーションを展示するまれな機会を喜ぶ。

 玄関前に並ぶのは、丸太とアルミの棒を組み合わせたインスタレーション「散(さん)境(きょう)端(は)因(いん)」。20年ぶりの展示で、木の皮は変色し、ひびやゆがみも生じている。その時間の厚みが作品に表れ、新しい感覚を見る者にもたらす。

 「作品だけが独立しているのではなく、美術館と両方の空間が生きなければいけない。館の周囲の環境はだいぶ変わり、昔と全く同じとはいえないが、僕の中では20年間ずっと続いている意識がある」と話した。

 2009年に同館で個展を行った束芋(たばいも)(43)は、女性の情念に着目した映像インスタレーションを、鏑木清方や小倉遊亀らによる女性を描いた日本画と展示。
 12年に神奈川文化賞未来賞を受賞した淺井裕介(38)は、円形の展示室いっぱいに巨大な壁画「いのちの木」を制作。壁画の上に、長谷川潔や武井武雄らが描いた動植物の作品が並ぶ。


淺井裕介の壁画と所蔵品が並ぶ展示スペース
淺井裕介の壁画と所蔵品が並ぶ展示スペース

 インドネシア在住の今津景(38)は、名画や古代彫刻などの画像をデジタル加工し、それを元に油彩で描く。今津の作品の前に並ぶダリやキリコらの彫刻は、画面から飛び出してきたようなイメージをもたらす。

 松永真太郎主任学芸員は「学芸員が思いもしない、アーティストならではの気付きがあって楽しめる」と話した。


今津景によるシュールレアリスムな展示
今津景によるシュールレアリスムな展示

■6月23日まで。5月2日を除く木曜と7日休館。一般1100円、高校・大学生700円、中学生500円、65歳以上千円。土曜は高校生以下無料。神奈川新聞社などの主催。問い合わせは同館☎045(221)0300。

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