誰にも借りられていない本を集めたフェア、コンビニに設けられた本の返却ポスト、全国の観光パンフレットを網羅したファイル、飛行機の機内誌も並ぶ雑誌コーナー…。全国の図書館で試みられている「いい工夫」の実例を集め、写真を交えて紹介する。ささやかな試みでも利用者に響くものだと感心させられる。
著者は横浜にある学術資源活用の企業、アカデミック・リソース・ガイドの代表と、同社ディレクター。図書館の整備、運営コンサルティングも手がける。
愛知県田原市や福島県白河市は「図書館で読んだ本を手元にも」と思った人のために、館内に書店の本の注文票を置く。ネット書店に押される地元書店の応援にもなるだろう。「無料貸本屋」と批判され、とかく書店に対立する存在と捉えられがちな図書館だが、こういう協力もあるのだ。
図書館は余暇や娯楽のためだけの施設ではない。本に親しんでもらう工夫を超えた取り組みもある。
被災地の宮城県南三陸町では、仮設住宅を巡回する移動図書館に法テラスの移動車も同行し、法律相談を受ける。法律関連の蔵書が活用されるというから、まさに相乗効果だ。新潟県村上市の図書館は市議会の録画DVDを貸し出し、市政の透明化に貢献する。
ここから分かるのは、図書館は市民生活に資するということだ。前書きによると、香川県の離島には入り組んだ細道に合わせた手押し車の移動図書館があるという。本を媒介に、より豊かな生活を-との思いが伝わる。
岡本真、ふじたまさえ 著(青弓社電話03・3265・8548、1944円)