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源氏物語身近に「ですます調」で統一 逗子の文学者が正訳全10巻完結

カルチャー | 神奈川新聞 | 2017年7月12日(水) 12:02

全10巻を前に「源氏物語は愛の裏側にある罪や死まで書いている」と語る中野さん
全10巻を前に「源氏物語は愛の裏側にある罪や死まで書いている」と語る中野さん

 早稲田大名誉教授で平安文学者の中野幸一さん(85)=逗子市逗子=が、2015年から出版を重ねてきた「正訳源氏物語 本文対照」(勉誠出版)の全10巻を完結させた。訳す作業に3年、出版に1年9カ月を費やした大作。中野さんは「源氏物語を読むきっかけになれば」と話す。 

 「源氏物語は『語りの文学』」とこだわり、読者に語り掛けるような「ですます調」の口語訳で統一。研究者の立場から、なるべく原文に忠実に文法的に正しい訳を心掛けた。

 それでも「現代の口語では表しきれない、原文の響きの深さ」を悔しがる。例えば第1巻「桐壺」の「御局(みつぼね)は桐壺なり」の一文。「当時の読者なら、これだけで桐壺の部屋が帝の御殿から後宮でもっとも遠い場所にあったと分かる。帝が桐壺まで行き来する姿に、ほかの女性たちの嫉妬は大変なものだっただろうと。短い一文で表現するからこその余韻がある」

 研究や大学での授業の傍ら、長年カルチャーセンターで源氏物語を教えてきた。「何度も読み返している分、頭に入っているからごく自然に口語訳ができた」。作業を始めてから先月第10巻を発刊するまで約5年は、かなり早いペースという。

 御年85歳。「『10冊出し終えたらぽきっと逝くんじゃないか』って周囲が心配してね」。完結したそばから講演や出版企画の依頼が舞い込み、「この年になってありがたいね」と笑う。すでに出版された1~9巻は「親しみやすく分かりやすい」と好評という。「古典というと敬遠されるが、愛という人間の根幹の思想を書いているのが源氏物語。身近に感じるきっかけになれば」

 
 

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