みなとみらい線・新高島駅(横浜市西区)の地下1階にこのほど、「BankART Station」(バンカート ステーション)がオープンした。15年前、地上階を開発するために準備されたが、使用されなかった空間を利用。国道16号線沿いにある「R16スタジオ」(同区)とを往来する展覧会「雨ニモマケズ (singing in the rain)」によって、人と文化の交流をつくり出し、活性化を目指す。
両施設を運営するBankART1929の池田修代表は「発展するみなとみらい地区などの新市街地と(それ以外の)旧市街地との差が開いていくことが、ずっと気になっていた。今回、二つの場所を使えるようになり、両地区を行ったり来たりすることができるようになった」と喜ぶ。
ステーションには、2018年に取り壊された「BankART Studio NYK」で、かつて展示を行った現代美術家を含め7組の作品が並ぶ。通路では映像作家の高橋啓祐による横浜の町に大量のヒツジが降るユニークな映像作品が、巨大な壁面に映し出されている。
同駅の周辺では今後、資生堂の新しい研究施設や京急グループの本社ビル、神奈川大のみなとみらいキャンパスのオープンが予定されており、街並みや人の流れが大きく変わる。
「駅なので誰でも入れるし、通路の通り抜けもできる。そんな場所に現代アートの導入部ができたのは、とても意味のあることだ。今、この辺りはものすごい勢いで変わっていっており、今後、どのように使っていくかを考えているところ」と池田代表。
ステーションからR16スタジオまでは、徒歩で約5分。同スタジオは、廃止された東急東横線の横浜駅から桜木町駅までの高架下部分を利用している。半ば野外で、道路からも作品を見ることができる。上部の線路跡は、21年度までに遊歩道にする計画が立てられている。
同スタジオでは8組の現代美術家たちが、公開制作中だ。自らの引きこもり経験を通して、他者とのつながりや心の傷を問う渡辺篤は、コンクリートの小屋に立てこもり、壁を壊して出てくるパフォーマンスアート「7日間の死」を再演する。
稲吉稔(美術家)と渡辺梓(役者)による美術ユニット「nitehi works」(ニテヒワークス)は「見えない再生」をテーマに表現。使われなくなったビルの室外機やレースの布、診療室のドアなどを組み合わせ、気付かないままに失われていくものへの認識を促す。稲吉は「美術館ではなく、日常の中に落とし込んで、普段は感じにくいアートの余白や行間を読み取ってほしい」と話した。
「雨ニモマケズ (singing in the rain)」展は24日まで。入場無料。問い合わせはBankART1929電話045(663)2812。