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師・文楽に恋い焦がれて 柳家小満ん 横浜で独演会最終回

カルチャー | 神奈川新聞 | 2019年3月15日(金) 17:17

柳家小満んさん
柳家小満んさん

 横浜育ちの落語家・柳家小満(こま)ん。1994年から横浜で続けてきた独演会が16日、150回の節目で幕を閉じる。「空から見てるから」。憧れてやまなかった師匠・桂文楽との約束が、取り組んだ年月を支えてきた。 

 「今、猫を読んでるんだ。若い頃よりも、一文一文がなんとも豊富に感じて面白いよ」。夏目漱石の「吾輩は猫である」の単行本を手に、目をキラキラと輝かせる。
 
 小説、文楽、俳句-。身に付けた幅広い教養は、噺(はなし)にも反映される。昨年披露した「お楠物語」は、横浜ゆかりの写真家・下岡蓮杖(しもおかれんじょう)が開港当時の野毛坂(同市中区)を舞台に書いた浄瑠璃を下敷きに、落語に練り直した。
 
 「過去の豊かな情景を思い出すことを、落語で目指したい」と小満ん。
 
 明治、大正の洒脱(しゃだつ)さが染みこんだ品のあふれる文楽の落語に憧れ、大学を中退して、噺家の道に入った。「おい、横浜の」。横浜出身が珍しかったのか、入門した直後は、こう師匠に呼ばれていたと笑う。
 
 「噺なんてどうだっていいんだよ」
 
 師匠は、手取り足取り落語を教えてくれるわけではなかった。やることが分からず、掃除を一生懸命取り組んだ。「でも、今思えばね、世間のあらゆる喜怒哀楽とか、人の情をくみ取れるようにならないと、噺が生きてこないんだ」
 
 周りの先輩から稽古をつけてもらい、人間関係を築く中で、ついに晴れ舞台が訪れた。文楽からは楽屋見舞いが届き、「いいかい、おまえ、勉強したもんが勝ちなんだよ」と、意外な言葉を掛けられた。
 
 「昨日までの教育と違うなと思ったけれど、でも、どっちも大切なんだ。落語なんてどうだっていいんだよ。もっと大事なことがあるんだよ。でも、勉強した方が勝ちなんだよ。それ以来、ずっと東京の会は続けてきたよ」
 
 横浜の会では100回まで、同じ演目は一度もなく、幅広い噺を披露してきた。「地元で会を開催するのは、気持ち的にも恥ずかしさもあったけれど、中学や高校の同級生と共に続けてこられた」と語る。150回の節目は、「長屋の花見」「狸(たぬき)の鯉(こい)」「らくだ」の三席。
 
 「最後だから気負うってんじゃなく、季節に合わせて選んだ噺です」
 
 「師匠との約束があるから。これからも落語を生涯やり通す」と、天を見上げる。「でも、どんどん自分から遠のいて、ますます輝くんだよな」と笑った。

 16日、横浜・関内ホール小ホール。午後2時開演。入場料2千円(全席自由)。問い合わせは「横浜 小満んの会事務局」電話045(773)3751。


やなぎや・こまん 1942年生まれ。61年桂文楽に入門。71年文楽没後、柳家小さん門下へ。75年真打ち昇進

 
 

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